| ユーザ中心設計のすすめ(第17回)― 1日500円!?コインパーキングの看板 |   | 
			
			
		
					
				| 2008/10/30 木曜日 10:10:15 JST | 
					
			| ===================================== 本編
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 駐車場の看板に記載されている「60分○○○円」「1日最大○○○円」という情報は、駐車場を選ぶとき重要なポイントになります。 お昼休みに会社近くを歩いていると、写真のような看板がありました。
 
  
 まず目に飛び込んできた情報は「最大500円」でした。 安いなぁと思い、よくよく見ると・・・ん?「24:00~8:00に限って最大500円?」と見えなくもありません。相場的にはどう考えてもこちらの方が正しそうです。 確かめたくなり、後日、管理会社に問い合わせたところ、やっぱり「24:00~8:00に限って最大500円」との事。
 
 とりあえず疑問は解決しましたが、どうもすっきりしません。 私が最初に受けた印象は、「1日最大500円」でした。看板を一瞥したとき、「3つの時間帯ひっくるめて最大500円」と見えたからです。 「最大500円」に注意が惹かれすぎたためか、上の3つの時間帯に関する情報を同列のものと捉えてしまい、「24:00~8:00に限り」をすぐに判断できなかったのかなと思います。 今回は歩いていたこともあり、ある程度考えながら看板を見ることができました。しかし、車に乗ってこれと同様の看板をチラ見しただけとしたら、「1日最大500円」と勘違いして、つい長時間利用していたと思います。
 
 ※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.322 担当:吉田)より一部加筆修正して転載。
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 解説
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 「情報デザインの原則:群化」
 
 人間の認知的特性として、「近いものに対して意味のあるまとまりとして捉える」と同時に「属性の似たものをまとまりのあるものとして捉える」傾向があります。これはゲシュタルト心理学のにおいて「群化(grouping)」と言われています。
 
 今回の事例で言うと、「最大500円」の情報とそれにいちばん近い「24:00~8:00」という時間帯の情報が一つのまとまりとして見えるよりも、同じ時間(の属性)を表示した上の3つの情報がまず一つのまとまりとして見え最大500円は3つすべてにかかる情報として見えた、ということでしょう。
 
 ユーザインタフェース(特に情報デザイン)に取り組む上で、この「群化」と言う特性は非常に重要で、レイアウトによっては思ってもいない受け止められ方をする可能性があることを意味しています。逆に言うと、こうした人間の特性をうまく使うことで、非常に効果的で効率的であり、時には面白く情報を伝達できるものでもあります。
 
 ちなみに現在ではこの看板、以下の写真のように改良されていました。
 
  改良後の看板
 
 どこが変わったか分かりますか?変更部分を拡大してみましょう。
 
  変更部分の拡大(アオ囲み部分)
 
 相変わらず一見したときの分かりやすさはあまり変わりませんので、注意深く見ないと気付かないかもしれませんが、一応読めばわかるようにはなりました。きっと問い合わせや、場合によってはクレームが結構あったのでしょうね。
 
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 筆者プロフィール
 龍淵 信
 
  1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。 1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
 2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes 
Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes 
Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
 携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。
 
 株式会社 
U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp
 
  
 
 
 
 
 
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