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ユーザ中心設計のすすめ(第10回)―エラー時のユーザへの伝達(白物家電の事例) プリント
2008/07/23 水曜日 12:09:26 JST
第10回は、洗濯機で見られたエラーの伝達方法に関する事例をご紹介します。

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本編
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タイトル:気づきにくい異常報知表示~洗濯機~

我が家の全自動洗濯機、全自動なのに途中で停止してしまう現象が発生するようになりました。 途中で停止すると、ランプが規則的に点滅しているので、調べればその症状と対策が分かるはずだと思い、洗濯機に貼ってある警告シールを見たり、Webでマニュアルを見たりしましたが分かりませんでした。結局、修理スタッフの方に診てもらうことにしました。

診断時間はおよそ30秒。すぐに解決です。なんで? 蛇口のひねりが足りず、満水になるまでに時間がかかりすぎていたのです。(別にけちっていたわけではありませんよ。使い始めに蛇口を開けて以来、そのままでしたから。) 蛇口を全開にして修理は終了となりました。

たった30秒で直ったこともショックでしたが、「実はここに異常報知のシールが貼ってあるんですよ」と言われたのが一番ショックでした。なんとそれは洗濯機の蓋の裏側にあったのです。
      rs-080723-1.jpg
                                      いつもの開け方

     rs-080723-2.jpg
                                  警告表示は蓋の裏側に

蓋は少し持ち上げれば自然に折りたたまれるようになっていたので、その裏側にあるとは全く気が付きませんでした。いつもの使い方からは想像も付きませんでした。

感電や漏電などの人体に影響のある致命的なエラーについては蓋の表、ランプの点滅による機械の故障などについては蓋の裏、という切り分けがされているようですが、そんなところに貼られちゃ無理ですよって感じです。

異常報知のシールが目に付く所にあれば、あんなにお高い授業料を払わずに済んだのになぁ。。。
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解説
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「エラーの伝え方」
ここでは主に表示場所の問題として取り上げている本編とは違った視点で捉えてみたいと思います。

洗濯機に限らず、電子レンジや炊飯器の様な白物家電(もはや名が体を表さなくなりましたが)において、ユーザはこうした機器のエラー状態と接する頻度が昔よりも多くなってきたように感じます。また報知音には様々な種類のものがありますが、ここでは特にエラー音に関して言及します。

白物家電に多く共通して言えるのは、情報を提示するための十分な手段(音声での通知やリッチなGUIのための表示デバイス)を持たない、ということです。報知音は非常に限られた音のパターンでしか鳴らすことができず、またディスプレイはかなり表現力の乏しいデバイスでしか表示できません。エラーだけに着目しても、様々なエラー状況が発生しますので、結果として情報の具体的な内容までを伝えることは不可能です。

さてユーザの視点でエラーを考える(本編の洗濯機で蓋の表に表記されているような致命的なものはまた別とする)と、まずは大きく2つに大別できます。それは、1.「自分で対処できるエラーなのか」、2.「業者を呼ぶべきエラーなのか」ということです。1と2がまず切り分けられれば、あまり悩むことなくその後の手当てができるようになります。1であればとにかく取扱説明書なり本体の注意書きを見る、2であればとにかく販売店なりメーカに電話をする、ことになります。
この2つの切り分け程度であれば、上記のようなデバイスの制約があっても、取り説なり本体への表示も合わせて工夫することで、うまく伝えることができるのではないでしょうか。これにより何か事が起こった時に、より迅速な対応が可能になるとともに、ユーザの負担はかなり軽減されるはずです。結果としてユーザがシステムに対して抱く信頼感は、そうでない場合と比べて高いものになると思われます。私もこと白物家電に限ると、エラー音や表示に直面した際に取り説などでの案内も含めて、まずこの2つが初めにうまく切り離せるようになっている様なものとは出会った記憶がありません。(音声や表示量が比較的豊富な表示デバイスを実装し、それなりの情報提供がされているものは除きます。)

白物家電は特に、老若男女を問わず必需品として使われていることが多く、高いユニバーサル性が求められる商品です。今回のように簡単に自己解決できることさえ、うまく伝えられないのであれば、エラーの伝達が十分に機能しているとは思えません。何よりユーザにとって大きな不満を感じさせることになります。万一の際にも安心して慌てず、確実に対応できるようなものが多く出回ることを期待します。

※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>の使いやすさ日記(No.275)より一部加筆修正して転載。

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過去記事
ユーザ中心設計のすすめ(序論)ーこれからの開発力を身につける
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ユーザ中心設計のすすめ(第2回)-バスの総合案内システムに関する事例
ユーザ中心設計のすすめ(第3回)-ハイブリッドレコーダーのGUI事例
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筆者プロフィール
龍淵 信

tatsuibuchi.jpg1963年生、1986年法政大学工学部建築学科卒業後、工業デザインを勉強。
1992年株式会社ノーバスに入社。2001年4月にグループ会社の株式会社ユー・アイズ・ノーバスの設立に参画。
2005年10月グループ会社である株式会社U'eyes Design(ユー・アイズ・デザイン)の執行役員を経て、2007年10月よりノーバスの経営戦略室とU'eyes Designのシニアアドバイザーを兼務。現在に至る。
携帯電話などのコンシューマ製品、公共機器、OA機器のユーザインタフェース開発およびユーザ評価・調査に数多くかかわり、特に自動車用システムは、ここ10年ほどで150ほどのプロジェクト実績を持つ。

株式会社 U'eyes Design:
http://ueyesdesign.co.jp
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