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皆で考える地球温暖化(19)ーエネルギー考「(原発の処方箋⑦)」 プリント

あれから一年、どうする原発

1月には、政府が、耐性評価審査法確認のため、IAEA(国際原子力機関)の来日を要請。2月には、政府の事故調が、5カ国(米、仏、韓、中、スウェーデン)の専門家を招請し、中間報告書を説明。政府はIAEAに、事故調は専門家にそれぞれコメントを求めた。が、IAEA、専門家、共に当たり障りのないコメントを残して帰国した。当然である。責任を負わない立場の者が、わが事と捉えるはずはなく、気の利いた助言など望むべくもない。

筆者の経験からしても、直接責任のない、現場のことを熟知しない専門家のコメントは、役に立った試しがない。夫々の立場で、それなりの責任を有し、互いの利害が一致していると思われる間柄でもそうであるから、利害が一致しない者の助言は、なおさらである。
政府や事故調の責任者は、何を考えているのか良く分からない。藁にも縋るような、頼りないリーダーは要らない。これが、命を懸け、自力で、復旧・復興に日夜奮闘している被災地の人たちはじめ、国民の正直な気持ちではないか。

また、先日は、民間の事故調が報告書を公表した。が、その内容は我々の「想定内」で、国の杜撰な危機管理を槍玉にあげ、批判はしたが、肝心の東電幹部の深層心理には迫れていない。従って、調査は未完で、これを提出して終わりなら、報告書は埃を被って眠ることになり、何の役にも立たない。委員が、これを仕上げ、「背中」でリードし、安全確保を立証して始めて、調査したと言える。本調査をどう活かすのか。今後の活動に期待したい。

危機を管理するには、対応システムを構築し、リーダーが「隗」より始め、メンバーの士気を鼓舞し、臨戦態勢を維持し、非常時に備え、訓練を重ねる必要がある。従って、泥臭く根気も要る。また、管理には、リーダーの先を読む力、経験等あらゆる能力が求められるが、最も大切なのは「実行力」である。事実、ISO(国際標準化機構)やCDM(クリーン開発メカニズム 京都議定書に定められた温室効果ガス削減法の一つ)においては、システムを運用し、成果を挙げることが最も重要視されている。

筆者は両システムに経験があるが、CDMは特に厳しく、運営機関を希望する会社のシステム構築を支援した際、国連の審査員は、膨大な書類には目もくれず、運用体制とメンバーの品定めに終始、非常時を想定したインタビユーを繰り返し、システムが機能するか否かのチェックに最も時間を割いた。

つまり、書類が完璧であることは当然で、システムを生かせるか否か、一歩先の審査をしたのである。換言すると、システムに魂が入り、血が通わせられるか否かを視たのである。このように、運用を重視し、成果を求める。これが世界の流れである。ところが、わが国においては、危機管理のみならず、全てのシステムにおいて、書類審査重視の傾向が今なお強い。このようなことから、システム審査合格でも、これを運用して成果を挙げている例は多くない。

システムが機能しないと成果は挙がらない。その典型例が福島第一原発(書類上でもシステム未完だが)であり、八岐大蛇の如き、複雑怪奇なシステムを、素人が振り回したことが、大惨事の原因となった。成果を挙げるためには、やる気のあるリーダーの下、「勇力者」が、簡潔明瞭なシステムを作り、日々訓練を重ね、見えない敵への備えを万全にすべきである。が、それでもなお、いざと言う時には、気が動転して、右往左往し、訓練通りには行かない。と、断言出来るほど危機管理は難しい。

従って、危機管理は、リーダー始め、集団の幹部が、算盤勘定等、訳の分からぬ理屈を捏ねくり回し、逃げたがる課題である。しかし、危機管理に要する労力や費用等は、事後処置に掛かるそれとは比ものにならないほど小さいうえ、ケース展開をすることで、新しい発見もあり、技術の進歩にも大きく寄与する。

さらに、管理を万全にすることで、関係者全員が自信を持ち、仕事に集中できることから、精神衛生面の効果は計り知れず、集団が活性化され、大きな経済効果も生まれ、周りにも迷惑を掛けない。が、逃げ腰になると、神話が始まり、士気は衰え、仕事の効率も落ち、災害ばかり発生し、危機の餌食となる。その時の痛手は、一様ではないが、今回の事故からも分かる通り、会社や国が存亡の危機に瀕する。
このように考えると、危機管理は、まさに、リーダーが真正面から取り組んで損をしない最も重要な課題である。

あの「フクシマ」から既に一年の月日が流れた。が、無責任なムラ人達は益々のさばり、原発問題は堂々巡り。何時までたっても埒が明かない。わが国には百年の計がなく、国家像が明確でないことから、何事も行き当たりばったり。従って、確固としたエネルギーの将来構想もなく、原発ありきで安易に導入したから、育む土壌もない。安全を確保する技術がなく、焦燥感にかられた政府は、思いつくまま、手を打っている。しかし、やることなすこと的外れで気休め。数を撃っても、下手な鉄砲は当らない。急がば回れ。全原発を停め、国を挙げて、これまでを猛省し、世界観を持って、国家像を描き、人心を一新し、一から出直す以外に原発処方の道はない。

過去記事
・皆で考える地球温暖化(1)-連載にあたって
・皆で考える地球温暖化(2)-温室効果ガスと地球温暖化
・皆で考える地球温暖化(3)-削減対象とならない水蒸気
・皆で考える地球温暖化(4)-世界像を描け
・皆で考える地球温暖化(5)-地球力
・皆で考える地球温暖化(6)-COPは踊る
皆で考える地球温暖化(7)-深海に眠るメタンハイドレート
・皆で考える地球温暖化(8)- 今、何故温暖化か
皆で考える地球温暖化(9)- 2050年の世界
皆で考える地球温暖化(10)-水が危ない(その1)
皆で考える地球温暖化(11)-水が危ない(その2)
・皆で考える地球温暖化(12)-エネルギー考「原発は安全が命」
・皆で考える地球温暖化(13)-エネルギー考「原発の処方箋」

・皆で考える地球温暖化(14)ーエネルギー考「原発の処方箋2」
・皆で考える地球温暖化(15)-エネルギー考「原発の処方箋3」
・皆で考える地球温暖化(16)-エネルギー考「原発の処方箋4」
・皆で考える地球温暖化(17)-エネルギー考「原発の処方箋5」
・皆で考える地球温暖化(18)-エネルギー考「原発の処方箋6」

筆者プロフィル
東  勝(ひがし まさる)

co2-higashi.jpg環境・経営コンサルタント
VMCYハーバークラブ会員
1941年愛媛県大洲市生まれ
京都大学工学部卒業後
日本鉱業(現新日鉱ホールデイングス)(株)入社
(株)日鉱テクノサービス、日鉱金属(株)等を歴任
現在、環境伝道師を自認し、製造現場での豊富な経験を基に、
京都メカニズムのCDMプロジェクト審査・検証員
温室効果ガス排出量取引審査・検証員
環境ISOマネジメントシステムの構築支援・監査
環境リサイクル・非鉄金属事業の経営・技術支援及び
工業英語翻訳者
として活躍中
著書:「地球温暖化は科学を超える」(牧歌舎)
保有資格
・CDMプロジェクト審査・検証員
・環境ISOマネジメントシステム審査員補
・エネルギー管理士
・公害防止(大気・水質1種)管理者
・甲種危険物取扱主任者
・高圧ガス取扱主任者
・ボイラー技士
・衛生管理士
・工業英検2級(翻訳)

 

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