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皆で考える地球温暖化(12)-エネルギー考「原発は安全が命」 プリント

原発は安全が命
かつて、筆者は「2050年の世界」と題し、人類社会と太陽エネルギーの話しをしております。その時、わが国の原発は、初歩的ミスが多く、基本の「キ」が守れていないことから、何時の日か安全神話は崩壊し、大問題を起こす可能性が高いと見ていたので、あえて、主役から外し、太陽エネルギーを中心とした再生可能エネルギーがこれからの主役であるとの持論を展開しました。

今でも、その考えに変わりはありませんが、東日本大震災を機に、原発についても、今後、我々はどう向き合うべきか、その光と影を追いかけてみたい、との考えから、本文を認めてみることとしました。 

みなさんご存知の通り、3月11日に起きた未曾有の大震災で福島第一原子力発電所が機能停止になり、地域住民は言うに及ばず、多くの国民が日々放射線に怯える大惨事となっております。
東電始め、原発村の住人達は、先の見えない大変な事態になっても、今回の惨事は「想定外」のことが原因で、やむを得ない、と他人事のような発言を繰り返しております。

たしかに、自然の力が科学を超えることはよくある話ではありますが、今回の災害は過去のデータを紐解き、多方面からの識者の助言に耳を傾ける謙虚な姿勢があれば、「予見」出来たことであり、「想定外」の発言は予想外で、聞くに堪えません。特に事の重大さに鑑みると、「想定外」で片付けられる問題ではありません。

チェルノブイリと同じ、レベル7の大惨事を世界は深刻に受け止め、固唾を呑んで「フクシマ」の行方を見守っており、今後原発の位置づけは大々的に見直されると思って間違いありません。

原発先進国のアメリカやフランスは強気の構えですが、わが国はどうするのか、そして、中国始め、原発導入を進めようとしている途上国はどう考えるのか、今回の惨事は我々人類に大きな課題を突きつけることとなりました。

エネルギー問題は、将来の人類社会を「想定」し、考えるべきであり、エネルギーを社会に無理やり当てはめようとすると、今回のように大きな間違いを起こします。すなわち、先ずエネルギーありき論は本末転倒であると言わざるをえません。

中国が日本を抜き、GDPで世界第2位の経済大国となったように、開発途上国はこぞって豊かな暮らしを切望し、経済発展に躍起となっております。
この傾向は、あくなき人間の欲望が推進力となり、益々加速されると考えられることから、途上国が先進国と肩を並べる日はそう遠くないのでは、と思われます。

その時世界はどうなっているのか「想定」し、人類社会とエネルギーとの関りを推論し、今から道を付けておくことは意味あることと考え、設定したのが、「2050年」、92億の人々が日本並みの生活をしている世界でした。

そこで、見えてきたのは、わが国同様に、最も効率的にエネルギーを使用しても、エネルギー資源の枯渇を心配しながら、地球温暖化にさいなまれている、世界の未来の姿でした。

エネルギー資源の将来を展望してみますと、量的には原子力、太陽光等の再生可能エネルギー、共に有望視され、必要量が賄えるものと推測されております。

一方、地球温暖化防止の面から見ますと、原子力は発電そのものでは二酸化炭素を発生しませんが、発電所建設から廃止までの排出量を勘案すると22gCO2/kwhの負荷を地球環境に与えている計算になり、これは、太陽光発電の30gCO2/kwhよりも少なく、現行の発電方式の平均値や、化石燃料使用の火力発電よりも、二酸化炭素の発生量は遥かに少ない値となっております。

そのうえ、発電単価の4.8~6.2円/kwhは石炭火力の5.0~6.5円、太陽光発電の46円を凌ぎ、最も安価(出典:08年版経産省エネルギー白書)とされており、競争力もあることから、有力な地球温暖化防止策であると考えられてきました。

このように、原子力については、安全さえ確保されれば願ってもないエネルギー資源と思われていました。しかし、今回の事故です。これで安全神話が崩壊し、原発に対する国民の見方は大きく変わりました。

今後は安全の確保や万一の事故に備えた補償対策費、廃棄物処理費等々の見直しをし、その増加費用も含めたコストで再生可能エネルギー等と比較し、経済性を問い直そうと言う風潮になってきたのです。

いずれのエネルギーにあっても環境問題への備えは必要ですが、特に原発においては、まさかの場合、広範囲に悪影響を及ぼす、大変危険な物質を取り扱っていることを常に認識し、人為的なミスを犯たり、自然災害に遭遇しても、被害を最小限に食い止められるように異常時処置体制を構築し、機能訓練を繰り返し、万一の場合の備えを怠ってはなりません。

このような観点で、今回の事故の対応状況を見ますと、余りにもおそまつであると言わざるを得ません。
非常時には、全身で汗を掻き、数々の修羅場を乗り越えてきた歴戦の兵が求められますが、専門家を含めマスコミに登場する関係者は素人ばかり。
素人集団が漕ぐから船は山に登ってしまう。これでは、現場で身体を張って事態収束に汗を流している作業員は報われません。

収束を急ぐなら、放射性物質の特性を熟知し、取扱に長け、設備の特徴を隅々まで熟知した歴戦のリーダーを選び、任せて、社長や首相はリーダーが十二分に腕を発揮できる環境を創ると共に、責任を取る覚悟で臨む以外に道はありません。
このままだと頼みの綱である作業員が疲労困憊し、9ヶ月以内での収束は絵に描いた餅となる恐れは十分にあります。

この体いたらくでは、日本のどこかで、第二の福島が起こると、わが国は潰れるのではないかと思い、ぞっとします。ましてや、一次消費エネルギーが今の約4倍にもなると予想される2050年に、その全てを原発に頼ることとすれば、100万kw級が約5万基も必要となることを考えると、世界は末恐ろしいことになります。

原発の怖さを知った今、現実的には、我々は再生可能エネルギーと原子力のベストミックを追及することになると思いますが、そのときにあっても大切なのは、やはり原発の安全性なのです。
安全確保の鍵は、当事者が放射性物質の本質を十分に把握し、設備の心を読み、血を通わせ、これを可愛がり、原発を自由自在に操ることが出来るか否かにかかっています。

しかし、現代の科学をもってしても、自然の力は計り知れないこと、そして、我々人間は過ちを犯すものであることを考えると、安全に絶対はありえません。
このような論理に立ち、人類の未来永劫の繁栄を願うなら、時間はかかっても、原発は再生エネルギー開発までのつなぎである、と位置付けるのが順当ではないでしょうか。

過去記事
・皆で考える地球温暖化(1)-連載にあたって
・皆で考える地球温暖化(2)-温室効果ガスと地球温暖化
・皆で考える地球温暖化(3)-削減対象とならない水蒸気
・皆で考える地球温暖化(4)-世界像を描け
・皆で考える地球温暖化(5)-地球力
・皆で考える地球温暖化(6)-COPは踊る
皆で考える地球温暖化(7)-深海に眠るメタンハイドレート
・皆で考える地球温暖化(8)- 今、何故温暖化か
皆で考える地球温暖化(9)- 2050年の世界
皆で考える地球温暖化(10)-水が危ない(その1)
皆で考える地球温暖化(11)-水が危ない(その2)

筆者プロフィル
東  勝(ひがし まさる)

co2-higashi.jpg環境・経営コンサルタント
VMCYハーバークラブ会員
1941年愛媛県大洲市生まれ
京都大学工学部卒業後
日本鉱業(現新日鉱ホールデイングス)(株)入社
(株)日鉱テクノサービス、日鉱金属(株)等を歴任
現在、環境伝道師を自認し、製造現場での豊富な経験を基に、
京都メカニズムのCDMプロジェクト審査・検証員
温室効果ガス排出量取引審査・検証員
環境ISOマネジメントシステムの構築支援・監査
環境リサイクル・非鉄金属事業の経営・技術支援及び
工業英語翻訳者
として活躍中
著書:「地球温暖化は科学を超える」(牧歌舎)
保有資格
・CDMプロジェクト審査・検証員
・環境ISOマネジメントシステム審査員補
・エネルギー管理士
・公害防止(大気・水質1種)管理者
・甲種危険物取扱主任者
・高圧ガス取扱主任者
・ボイラー技士
・衛生管理士
・工業英検2級(翻訳)

 
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