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テクニカルショウ2011(第4回)―出展者紹介:横浜国立大学 プリント
2011/01/16 日曜日 09:52:36 JST

レアアースのリサイクルで新技術
イオン液体で高濃縮化して回収

■ネオジムは9割を中国から輸入
ほとんどすべてを輸入に頼るレアアースは、昨今の中国の輸出規制をあげるまでもなくその安定供給確保が産業界で大きな課題となっている。対策として輸入国の拡大や使用量の削減、代替材料の開発などが求められているが、なかでも、いま注目を浴びているのがリサイクルだ。すでに多くのレアアースを用いた製品が国内で使用済みとなり廃棄されていることから、これをリサイクルして新たな有用金属資源としてこれを再利用できないかというのだ。

hd-110116-1.jpgただ、ネオジムなどのレアアースはリサイクルに膨大なエネルギーを必要とし、また二次廃棄物を大量に発生するなど環境負荷が高い。この環境負荷を低減させようと横浜国立大学、教育人間科学部自然環境講座の松宮正彦准教授は「イオン液体」に注目し、これを電析媒体に用いたリサイクル技術を確立した。

一般に、イオン液体は有機溶媒とは異なり難揮発性であり、また耐熱性・耐還元性に優れているため環境調和型の溶媒として知られている。また、リサイクルするネオジムは高品位の磁性体として利用されており、高性能モーターやハードディスクなどの部品に多く利用され、国内外で年間約4万7千トンを生産し、そのレアアース原料の9割近くを中国から輸入している。

■廃棄物もなく環境負荷が低い
レアアースのリサイクル技術にはこれまで溶媒抽出(湿式法)と熱還元法(乾式法)の2種類があった。このうち湿式法は高純度で回収できるもののプロセスが複雑で分離効率が低く、二次廃棄物を大量に発生させる難点があった。一方、熱還元法は金属の形態で回収できるが高温にするため膨大なエネルギーが必要で、その制御の安全性も課題だった。

これに対し松宮氏のリサイクル技術はイオン液体を溶媒に使うことでシンプルなプロセスとなり、二次廃棄物の発生を低減させるだけでなく、低温稼働するので省エネ化になる。さらにイオン液体が電解槽を循環し、連続的な濃縮・分離操作を可能とするクローズドサイクルのため安全性も高い。

リサイクルプロセスの概念は次の通りだ。まずレアアースを含んだ廃棄物をイオン液体に入れて陽極溶解させ、電解析出で鉄族金属等の電気化学的に貴な金属を先に取り除く。次に、電気泳動法で高濃縮したレアアース塩を別の電解槽に順次移行させる。最後に、レアアースリッチな電解槽から目的のレアアースを電解析出する。

■リサイクル設備も省コスト
プロセスがシンプルなので設備はこれまでの技術よりも低コストで済み、ネオジム以外のレアアースも回収できるという。新技術の確立にともない同大学は「一般に広く知ってもらい、民間のリサイクル事業の一助になればいい」(産学連携推進本部)とする。

この新技術は2月2日から4日まで開催されるテクニカルショウ2011の産学連携コーナーで公表し、2日には11時35分から会場内でワークショップも行う。レアアースのリサイクル化は国策としても取り組まれており、イオン液体の利用は事業化を含めてぜひ知っておきたい新技術だ。

横浜国立大学:http://www.ynu.ac.jp/
 
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