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広域産学連携・大学の“知”を生かす(第7回)-産学交流サロン・都市型農工連携 プリント
2010/09/10 金曜日 11:48:15 JST


"ジャガイモペプチド"がコレステロールを下げる
フライ油の交換時期を電気で測定する

 横浜企業経営支援財団は8月27日、産学交流サロンを開催し「自然豊かな食材の機能性、素材を活かす測定・計測技術!~帯広&広島~味覚と技術を横浜に届けます~」としてセミナーを開催した。講師は帯広畜産大学の田中一郎氏と丹治幹男氏、広島大学の森下浩明氏と鈴藤正史氏の4名。

◆帯広畜産大学のセミナーは食の機能性から4つ 
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①十勝の自然が育んだ"とかち野酵母"でパンづくり、②十勝ワインのブドウ搾りかす(パミス)のメタボ予防効果、③ポテトタンパク質"ポテ味"の機能性と応用、④十勝の代表的農産物であるナガイモの食品機能性(大腸ガン予防効果)。概要は次の通り。

① とかち野酵母"は同大学、食品科学研究部門の小田有二教授の研究。エゾヤマザクラのサクランボから分離した新しい製パン用の酵母で、北海道産の小麦と組み合わせることで、さまざまな商品開発に利用できる。"とかち野酵母"を使ってパンを焼くと市販の酵母と比べると焼き色が濃くならず、また味香りともに優れ、高評価を得ているという。とかち野酵母はニッテン商事(千葉)が販売している。

② パミスとは、ワイン製造過程でブドウを圧搾した後にできる「果皮、種などの混合物」のことであり、抗酸化作用で知られるアントシアニンをはじめとするポリフェノール類やセラミド、オレアノール酸などの有用成分が含まれる機能性素材である。「パミスエキス」はこれを抽出、精製したもので、含有されるオレアノール酸は虫歯予防など口内ケアに効果があり、一方メタボリックシンドロームを予防する効果もあることが示唆されている。製品は「ニップンパミスエキスGR」として日本製粉(東京)が取り扱っている。

③"ポテ味"は、ジャガイモ由来のペプチド「ポテトペプチド」を産官学で製品化したもの。十勝産のジャガイモはおもにデンプン原料として利用されるが、残渣の利用が期待されていた。これを独自に研究開発し、付加価値を高めた。ポテトペプチドの特徴は善玉コレステロールを上げ、悪玉コレステロールを下げ、肝臓にやさしいこと。商品はコスモ食品(東京)が扱っている。

③ 十勝産のナガイモは他の主産地のものと比べると、とっくり形で表皮が白く、歯ごたえと粘りのあるのが特徴。このナガイモについて食品機能性の研究が行われ、その成果として産学官連携により美味しさを兼ね備えた「ナガイモ青汁」が製品化された。研究によるとナガイモの食品機能性は、動物実験においては生だけでなく加熱処理しても大腸腺腫発症抑制効果があることが確認された。この結果を受けてナガイモ青汁についても効果を検証したところ、同様に大腸腺腫発症抑制効果が認められた。

小田有二教授:http://www.obihiro.ac.jp/ichiran/oda_yuji.html
ニッテン商事(製品紹介):http://www.nitten.co.jp/~ntn-nsj/
大西正男教授:http://www.obihiro.ac.jp/ichiran/ohnishi_masao.html
日本製粉(ヘルスケア事業部):http://www.nippn.co.jp/products/professional/pro/detail80.html
福島道広教授:http://www.obihiro.ac.jp/ichiran/fukushima_michihiro.html
コスモ食品:http://www.cosmo-foods.co.jp/
木下幹朗准教授:http://www.obihiro.ac.jp/ichiran/kinoshita_mikio.html
産学官連携青汁(製品紹介):http://www.sangakukan-aojiru.jp/

◆広島大学は測定・計測技術と食の機能性から5つ
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①誘電特性を利用した凍結被検体の最適加工温度の決定方法、②フライ油の劣化程度計測用インラインシステムの開発、③食品の食感指標測定装置の開発、④貝類のうま味成分コハク酸の疾病予防作用の発見、⑤海藻レクチンの機能および応用に関する研究。概要は次の通り。

①は"脆化温度"の決定方法を研究したもの。同大学大学院、生物圏科学研究科の羽倉義雄教授の研究で、脆化温度とは脆性(もろさ)が発現する温度のこと。たとえば、魚は部位ごとに脆化温度が違うため、この性質を加工に応用する。解体しやすい温度がわかるため輪切りや三枚下ろしなどの加工できる。また、未利用のまま廃棄している部位も脆化温度を測定すれば必要な部位だけ凍結粉砕などで取り出すことも可能となる。脆化温度は誘電特性を用いて被破壊のまま測定し決定できる。

②は、食品加工現場で勘と経験で行っているフライ油の交換を、その劣化度を電気で測定し適切な油の交換時期を知る研究。①と同じ羽倉義雄教授の研究。同氏はフライ油の劣化指標として、電気物性のひとつであるコンダクタンスに注目。フライ過程での油のコンダクタンスの変化を測定することで、油の交換時期を容易に判定できる。

③食感測定装置は、食品を咀嚼するさいに発生する音響信号と同等な信号を直接検出できる装置。所定の形状を持つプローブを被測定物に貫入させ、発生した信号音響を電気信号に変換する。この電気信号を数学的処理して食品の食感を客観的な数値として表示する。生物圏科学研究科の櫻井直樹教授が立ち上げた大学発ベンチャー、生物振動研究所(広島)で製品化している。

④は生物圏科学研究科分子栄養学研究室の加藤範久教授の研究。コハク酸は貝類のうま味成分としてこれまで知られてきたが、がん細胞の増殖抑制や、血管新生の抑制にも効果があることがわかってきた。血管新生を抑制すればアルツハイマー病や動脈硬化症などの予防や治療に効果が見込める。研究では新しい機能性食品の開発につなげたいという。

⑤は生物圏科学研究科の堀貫冶教授の研究。レクチンとは糖結合性タンパク質のこと。海藻レクチンの研究で、疾病(がん)マーカーを識別する早期診断試薬の開発、特性を活かした新規医薬素材の開発、健康食品素材などへの応用を研究している。

羽倉義雄教授の研究室:http://home.hiroshima-u.ac.jp/~foodeng/index.html
生物振動研究所:http://www.ava.co.jp/
加藤範久教授の研究:http://home.hiroshima-u.ac.jp/nutri/index.htm
堀貫冶教授の研究:http://home.hiroshima-u.ac.jp/mbrc24/

横浜企業経営支援財団:http://www.idec.or.jp/

 
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