進展しない羅針盤なき会議
皆さんご存知の通り、12月7日から18日までの予定で、COP15がデンマークのコペンハーゲンで始まりました。COP(コップ)とは締約国会議(Conference of Parties)の略称で、多くの国際条約の中で、その加盟国が物事を決定する最高の議決機関の役目を果たしております。
従って、地球温暖化の話によく登場してくるCOPは、気候変動枠組条約(略称UNFCCC,2009年7月現在191カ国と欧州共同体が締結、条約事務局は在ボン)の最高決定機関であり、その開催頻度は締約国によって決定されます。また、協議の場は必要に応じて、COP以外でも持たれますが、最終決定を行うのはあくまでもCOPです。
気候変動枠組条約は1992年6月に開催されたリオデジャネイロの地球サミツトで採択され(わが国は1993年5月に批准)、1994年3月に発効しております。発効に伴い、その翌年の1995年にはベルリンで第一回目のCOP、すなわちCOP1が開催されております。
その会合において、条約だけでは、問題の解決にはならないとの認識が共有されたことから、2年間かけて、議定書交渉を行うことを決定すると共に、開催頻度は年1回としました。このような経緯の下、1997年には京都でCOP3が開催され、その時採択されたのが、我々が頻繁に見聞する京都議定書なのです。
本議定書では第一約束期間(2008~2012年)に先進国全体で温室効果ガスの排出量を5%(対90年)削減することとしております。そして、「共通だが差異ある責任」の実行に向け、先進各国に目標が割り当てられ、達成すべき目標として主要国に義務づけられた削減率は、わが国が6%、アメリカが7%で、EUは8%(全て対90年)でした。
また、温室効果ガスの削減がより容易にできるように、京都議定書には削減量の国家間取引など4つのメカニズムも導入されております。これらは、クリーン開発メカニズム、排出量取引、共同実施、吸収源活動であり、京都メカニズムと総称され、活発な活動と成果が期待されておりました。
しかし、当時最大排出国であった肝心のアメリカが企業競争面からの不利益を理由に脱退し、現最大排出国である中国(世界比23.4%)や排出大国のインド(5.8%,共に08年、アメリカ国立オークリッジ研究所速報、ちなみにアメリカは18.7%、EUは10.6%、わが国は4.3%)に削減義務がないことから、成果に乏しくいわば有名無実とも言える状況で推移していることは皆さんご存知の通りです。
このような状況下、わが国及びアメリカに新政権が誕生し、変化の兆しが見え始めました。すなわち、2020年までに、わが国が25%(対90年)、アメリカは17%(対05年、対90年では約4%)削減するとの目標を打ち出し、前政権より大きく前進しております。
また、EUは従来通り20~30%(対90年,他国参加の場合30%)の削減を目標としております。
さらに、国際的な約束ではないとしながらも、これまで目標設定には強硬に反対していた中国、インドがそれぞれ、40~45%、20~25%(対05年、GDP当り)、の削減を掲げ、公表しました。これらは、温室効果ガス排出総量の削減に直結するものではありませんが、その前向きな姿勢は、世界でそれ相応の評価をされております。
このようなことから、世界は色めき、耳目はコペンハーゲンに集まっておりますが、これらの目標提示は時すでに遅く、十分な論議がなされないまま、COP15に突入したため、法的拘束力のある国際枠組は作れそうもありません。
すなわち、各国首脳の打ち合わせによる政治合意がせいぜいであり、具体的な目標値が定められた議定書の採択は、2010年以降になると予想されております。
目標基準年のすり合わせ問題や、途上国の削減義務を拒むかたくなな態度に、科学的根拠疑惑等が絡み合い、大山鳴動して鼠一匹、コペンハーゲンでも「会議は踊る」のではないでしょうか。具体論がなく、先の見えない状況では、疑心暗鬼、何度会合を開いても堂々巡りであります。
会議を進展させるには、わが国始め、先進国がスーパーコンピューター等を駆使し、各分野の「勇力者」を総動員し、しっかりした戦略を練り、夢ある世界像を描き、具体策を打ち出し、我々地球人みんなに説明し、各国首脳が「大英断」を下す以外に手はないように思われます。
過去記事
・皆で考える地球温暖化(1)-連載にあたって
・皆で考える地球温暖化(2)-温室効果ガスと地球温暖化
・皆で考える地球温暖化(3)-削減対象とならない水蒸気
・皆で考える地球温暖化(4)-世界像を描け
・皆で考える地球温暖化(5)-地球力
筆者プロフィル
東 勝(ひがし まさる)
環境・経営コンサルタント
VMCYハーバークラブ会員
1941年愛媛県大洲市生まれ
京都大学工学部卒業後
日本鉱業(現新日鉱ホールデイングス)(株)入社
(株)日鉱テクノサービス、日鉱金属(株)等を歴任
現在、環境伝道師を自認し、製造現場での豊富な経験を基に、
京都メカニズムのCDMプロジェクト審査・検証員
温室効果ガス排出量取引審査・検証員
環境ISOマネジメントシステムの構築支援・監査
環境リサイクル・非鉄金属事業の経営・技術支援及び
工業英語翻訳者
として活躍中
著書:「地球温暖化は科学を超える」(牧歌舎)
保有資格
・CDMプロジェクト審査・検証員
・環境ISOマネジメントシステム審査員補
・エネルギー管理士
・公害防止(大気・水質1種)管理者
・甲種危険物取扱主任者
・高圧ガス取扱主任者
・ボイラー技士
・衛生管理士
・工業英検2級(翻訳)
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