皆で考える地球温暖化(3)-削減対象とならない水蒸気 |
2009/10/11 日曜日 15:18:12 JST | |||||||||||||||||||||||||||||||
大気中に含まれる最も多い温室効果ガスが水蒸気(表-1)であることはよく知られ、地球温暖化係数(表-2)も大きいとされていることから、温室効果に支配的な影響力をもっていると言われています。 しかし、その反面、水蒸気は地上付近で熱を奪って蒸発し、高空で凝縮する際に放熱し、雨や雪氷の形で地上に戻るサイクルを通じて宇宙空間への放熱を促進したり、雲となって太陽光を遮ったりと温暖化を抑制する働きも持っています。 このように、水蒸気は相反する特性を有していることから、IPCCは「大気中の水(水蒸気、雲、降水等)は二次的なフィードバック機構に過ぎず、対流圏中での熱の再配分を引き起こすだけであり、地球の持つエネルギーの増減には含めない」としています。 従って、IPCCが地球温暖化の原因としてほぼ断定している人為起源の温室効果ガスに水蒸気は含まれておりません。 表-1地表付近の主要大気組成
注)水蒸気、二酸化炭素の濃度は季節、地域により変動する 表-2温室効果ガスの地球温暖化係数
注)地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential):温室効果ガスの地球温暖化に与える影響を数値化したもの。一定期間内(通常100年)に地球に与える放射エネルギーの積算値を二酸化炭素と比較し、比率にて表示。水蒸気は短期間に水や雲等に変化するので測定困難(IPCC第2次評価報告書)であるが二酸化炭素よりは大きい(8程度?)と推定される。 しかし、水蒸気による熱の移動は解明されていないのが実状であり、加えて人間活動起因の水蒸気排出量は自然起因の排出量とは比較にならないほど微量であるうえ、大気中の水蒸気を人為的かつ大量に増減することが出来ないことも、水蒸気が外されている理由の一つのようです。 このようなことから、現在、IPCCは二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)類、パーフルオロカーボン(CFCs)類、六フッ化硫黄(SF6)の6種の気体を温室効果ガスと規定し、地球温暖化の防止にはこれらの削減が必要であると訴えております。 しかし、このことには議論の余地があり、必ずしも科学者のコンセンサスが得られているとは言えません。すなわち、水蒸気は温室効果に75~90%の影響力があると言われ、イギリスのJEアンドリュー博士のように95%説もあります。従って、水蒸気の働きのさらなる解明が必要と唱える科学者もいます。 その最大の理由は、水蒸気を考慮に入れると、削減対象となっている温室効果ガスの影響力は10~25%、 (アンドリュー博士説では5%)と温室効果への影響力は格段に低下してしまうことにあるようです。 このようなことから、水蒸気を除いた温室効果ガスを対象に削減を進めても影響は微々たるものであり、その効果は疑わしいとの見方もあります。 これは一例ですが、地球温暖化関連の要因は正に天文学的数字にのぼり、厳密に突き詰めると、科学的に未解明の分野は山とあります。また、話は地球規模であり、実験して立証することができないことも本問題の泣き所です。従って、科学的に解明されていないことを理由にすれば、COPの足並みは永久に揃わないことになります。 過去記事 ・皆で考える地球温暖化(1)-連載にあたって ・皆で考える地球温暖化(2)-温室効果ガスと地球温暖化 筆者プロフィル 東 勝(ひがし まさる) 環境・経営コンサルタント VMCYハーバークラブ会員 1941年愛媛県大洲市生まれ 京都大学工学部卒業後 日本鉱業(現新日鉱ホールデイングス)(株)入社 (株)日鉱テクノサービス、日鉱金属(株)等を歴任 現在、環境伝道師を自認し、製造現場での豊富な経験を基に、 京都メカニズムのCDMプロジェクト審査・検証員 温室効果ガス排出量取引審査・検証員 環境ISOマネジメントシステムの構築支援・監査 環境リサイクル・非鉄金属事業の経営・技術支援及び 工業英語翻訳者 として活躍中 著書:「地球温暖化は科学を超える」(牧歌舎) 保有資格 ・CDMプロジェクト審査・検証員 ・環境ISOマネジメントシステム審査員補 ・エネルギー管理士 ・公害防止(大気・水質1種)管理者 ・甲種危険物取扱主任者 ・高圧ガス取扱主任者 ・ボイラー技士 ・衛生管理士 ・工業英検2級(翻訳) |