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AEC(ASEAN経済共同体)への戦略的アプローチ!(その7―上) プリント
2016/06/27 月曜日 13:34:45 JST

経済成長の3大要素とは、簡単に言えば労働力・資本力・技術力である。AEC全体の人口6.2億人は、NAFTA4.7億人、EU5億人を大きく凌いでおり、それだけ今後の経済成長の伸びしろは大きい。2030年までにはGDPで中国が米国を、インドが日本をそれぞれ追抜くとの予測はよく耳にするところだが、その要因の一つに13億人とか14億人とか言われる桁違いの人口が挙げられる。そのような観点から、本特集その5及び6においてはベトナムとフィリピンという人口9千万人から1億人の両国を取り上げたが、本号では域内最大の2.5億人を抱える人口大国インドネシアを取り上げる。

  1.インドネシアとは

国の大きさには、文字通りの国土の大きさとは別に、経済大国・軍事大国といった判りやすい物差しがあるが、インドネシアの場合はいろいろな尺度からみて極めて大きな国ということが言える。いくつかピックアップしてみると、先ず人口は世界第4位、中でも、イスラム教国家の中では世界最大の人口大国である。地理的概念で言えば、インドネシアは大小13,000余りの島からなる世界最大の島しょ国家である。また国土の東端から西端までの直線距離約5100KMは、アラスカ・ハワイを除く米国本土の東西間の距離・4300KMを大きく上回り、よって国内に2時間の時差を持つASEAN唯一の国である。ただし南北の距離は1900KMと米国の3000KMに及ばないが、要するに赤道を挟んで東西に細長い大きな国といったイメージである。加えて、日本は領海及びEEZ(排他的経済水域)の海域の広さでは世界第6位であるが、インドネシアは更にその上の第3位という広大な海洋大国である(因みに、第1位は米国・次いでカナダ)。一方、経済規模では、GDP9000億ドル前後でAEC域内ではダントツだが、1人当たりGNI3,650ドル(1人当たりGDP3,514ドル)と、まだ低位中所得国に属しており、4,126ドルという高位中所得国へのランク入りもそう遠い話ではない。ただ、人口1億人以上の国で、日米露の高所得国を別にすると、高位中所得国はブラジル・メキシコ・中国の3ケ国だけであり、人口の多さがこの部分ではある種のハンディキャップになっていることも否定できない。広大な国土と海洋、巨大な人口と1人当たり所得とのギャップをどう埋めて行くのか、下表に示す生産年齢人口比率と全人口の95%64歳以下という若くて豊富な労働力を、如何に成長のエネルギーに変えていくか、ということだと思う。

  2.インドネシアの主要経済指標と日本のポジション

同国の政治、歴史、宗教、文化などについては外務省HP(国・地域別一般情報)を参照頂くとして、ここでは本特集の趣旨である同国の市場性について考察したい。同国の主要な経済指標及び日本との貿易・投資の推移は以下の表の通りである。

                                                                                                              【表-1

 

2010

2011

2012

2013

2014

直近4年間

伸び率(%

口(百万人)

241.6

244.8

248.0

251.2

254.4

5.3

生産年齢人口比

15-64歳・%

66

66

67

67

67

  -

GDP10億ドル)

755

892

917

910

888

17.6

GDP/1人(ドル)

3,137

3,662

3,718

3,643

3,514

12.0

日本の輸出(億円)

13,945

14,123

16,187

16,621

15,605

11.9

日本の輸入(億)

24,762

27,160

25,764

28,172

27,156

 9.7

日本のFDI100万ドル)

490

 3,611

3,810

3,907

4,407

697.3

FDI(対外直接投資)統計の基準変更により2013年以前との連続性は無い。 従って、直近4年間伸び率欄は2013年までの3年間の伸び率である 

※出典:世界銀行World Development Indicators、財務省貿易統計、JETRO 

   ①    同国から見た日本の位置づけは、2014年の貿易総額では全体の12.5%で中国に次ぐ第2位、輸出においては、日本向けが全体の14.8%と最大の輸出先となっている。一方、FDIに関しても、日本は20102014年間の同国の受入れ総額1,174億ドルの10.3%121億ドルでシンガポールに次ぐ第2位であり、貿易と投資の両面において日本が如何に重要な存在であるかが判る。

   ②    因みに日本からの投資額に見る業種別投資分野のTOP-5は以下の通りである。

(1)    輸送機器産業

(2)    金属・機械、電気・電子産業

(3)    化学・医薬産業

(4)    住居・工業団地・オフィスなどのサービス産業

(5)    食品産業

   ③    上記とも関連するが、横浜港からのインドネシア向け輸出品目のTOP20は以下の通りである(2014年・完成車を除く)。自動車部品・金属加工機・ポンプ及び遠心分離機・原動機・荷役機械・半導体など電子部品・建設及び鉱山用機械・合成ゴム・電気回路等機器・電気計測機器・科学光学機械・通信機・有機化合物・ベアリング及び同部品・鉄鋼製品・亜鉛及び同合金・塗料類・アルミ及び同合金・重電機器・ゴム加工材料。正に下記で言及するが、同国が最も必要としている裾野産業そのものである。

  3.インドネシア経済の課題

  ①自国通貨ルピアの下落

   表-1にある通り、GDP(米ドルベース)では、その後世界銀行が発表した2015年の8,589億ドルを含め3年連続の落ち込みである。自国通貨ルピアベースの実質成長率は年率56%で伸びているが、ルピアの減価によりドルベースでは下落しているところが大きな問題である。ルピアの対ドル相場は、2012年以来続く経常赤字を反映して、2013年以来約40%下落し、1997年のアジア通貨危機直後以来の安値圏にあるが、根底にあるのは資源に依存した輸出構造から脱却できていない点にあると思われる。

②貿易構造と産業構造

JETRO資料による2014年の輸出の製品別シェアーでは、原油・天然ガス・鉱物性燃料や動植物性油脂といった資源由来のものが全体の41%を占め、国際商品相場に翻弄されるコモディティに大きく依存している、一方では「その他」のカテゴリー、いわゆるその他大勢の製品群が約40%を占めており、野球に例えれば4番バッター不在の輸出構造・産業構造に問題があると思う。残り約20%弱の電気・機械などの加工組立型製品もあるが、これとても部品などを輸入に頼っているということから、ルピア安が輸入コスト増に繋がるため、ルピア安による自律的な貿易収支の改善に繋がっていないということが明らかである。 かつては原油の輸出国であったが、その後の経済成長によりエネルギー需要が高まり現在は純輸入国、また天然ガスは純輸出国ではあるが、原油の赤字を埋めるには至っておらず、やはり高付加価値製品とその裾野産業の育成による競争力のある工業製品の製造・輸出基地に大きく舵を切ることが喫緊の課題であると考えられる。以上の観点からみても、同国の日本からの投資誘致へのラブコールと昨年来の誘致ミッション、直近のジョコ大統領の来日が製造業を含む日本企業の進出の背中を強く押すものと期待される。

次回は、これらの課題に対する同国政府の取組みにつきお伝えしたい。

(続く)

               (文責:今井周一 2016625日)

 
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