横浜産業新聞
larger smaller reset larger
Home arrow 特集/レポート arrow 広域産学連携・大学の“知”を生かす(第8回)―産学交流サロン・創エネ技術研究

注目記事

先進企業のCSR


広域産学連携


100年企業の条件


MH_cornor


SP_cornor

RSS配信

広域産学連携・大学の“知”を生かす(第8回)―産学交流サロン・創エネ技術研究 プリント
2010/09/21 火曜日 15:01:34 JST

太陽光発電のニーズは意匠+美観性と発電性能
未来素材グラフェンで窓もセルモジュールに

横浜企業経営支援財団は9月3日、産学交流サロンを開催し「太陽光発電技術の紹介」としてセミナーを開催した。講師は北九州産業学術推進機構産学連携センター担当部長の野田松平氏、タイセイ総合研究所上席研究員の杉本賢司氏、元旦ビューティ工業システム建材部部長の田村雅浩氏の3名。

野田松平氏は「太陽電池利用の多機能テラスシステム―開発・実証実験」をテーマに講演。概要は次の通り。
   sangaku-8-2.jpg
太陽電池利用の多機能テラスシステムは、"低炭素社会に向けた社会システム実証モデル事業"として、経済産業省の平成20年度補正予算として組まれたもの。地域・住民の参加と多機能性などをキーワードに、公共建築物で太陽光発電利用の実証実験をした。特徴は太陽光発電を単なる発電装置ではなく、都市空間にマッチしたより市民の身近な存在になるよう建物(テラス)をデザインしたこと。全国の自治体に地域住民参加型の設備として展開が可能。

機能は、地域住民、企業、自治体の情報を収集し発信すること。TVカメラを用いた視聴者参加型の情報技術を活用し、ゲーム感覚で低炭素社会を学べるコンテンツを開発して省エネ型大型TVモニターで情報発信する。
余剰電力は、売電もしくは蓄電し、災害時の非常用電源として活用する。管理メンテ費用は情報発信料と売電費用で賄う計画。課題は、新規開発した「据え置き型大容量リチウムイオン組電池」の過充放電保護回路の性能検証と、次世代有機系薄膜太陽電池の課題摘出。また、あわせて運用管理を行う運用システム機構の確立も課題となった。
財団法人北九州産業学術推進機構:http://www.ksrp.or.jp/fais/

杉本賢司氏は「環境と太陽光ビジネスの肝」と題して講演。太陽光発電の現状と課題を語った。概要は次の通り
   sangaku-8-1.jpg
日本のエネルギーを1Kwあたりの発電コストをみると、石炭を燃料とする火力は6~8円、原子力が5円。これに対して再生可能エネルギーは45~50円と割高。構成比から見ても全体の1%を占めるに過ぎない。ただし、2020年には2~3%まで高まるだろう。有望なのが原子力で、全体の44%を占めそうだ。太陽光発電体の現状と課題をみると、まず太陽光発電セルは世界の開発速度が速いため、発電効率や価格が追従しないと、競争に取り残されてしまう。

ただ中東地区では安価なことから発電効率が少し古い製造装置を導入して、国産化を計画する国もある。最新式でなくとも採光条件がいいので問題がない。ただ、砂嵐で受光装置が砂をかぶり、その対策が課題となっている。世界の投資家の目はいま日本の半導体メーカーの先端技術に注目している。理由はレーザーや工作機械など日本の微細加工技術世界がトップレベルにあるからだ。

ところで、有力な太陽光発電体の未来素材にグラフェンがある。これは原子1つ分の厚さのグラファイトのシートで、炭素原子とその結合からできており、蜂の巣状の六角形格子構造をしている。グラフェン薄膜透明電極を使った有機薄膜太陽電池は、日本の太陽光発電セルの次世代を担うもので、シリコン結晶より最大で3倍以上の発電能力を有する。開発されれば、窓ガラスそのものが透明な太陽電池セルとなり、自宅の電気を賄うことも可能だ。

一方、太陽光発電で見逃せないのが経営者の考え方。経営者の多くは売電で利益を上げるのではなく、社会貢献のひとつとして位置付けている。たとえば、発電効率のいい屋根よりも壁に設置すること望んでいる。これは屋根だと見えないが、壁なら誰にでも見えるのが理由だ。
㈱タイセイ総合研究所:http://www.taisei-soken.com/

田村雅浩氏は「屋根建築型(BIPV)太陽光発電システムの現状と展望」として講演した。概要は次の通り
日本は高温多湿で、台風で強風や暴雨にさらされ、降雪もある。これらの条件に対応する屋根形状や材料、工法の選定が必要だ。そこで、耐久性、耐風性、防水性、断熱性、遮音性、吸音性、通気性などが必要で、さらに美観性や意匠性も求められる。これまでの日本の家屋の多くは瓦屋根だったが、重量物のため木造家屋への付加も大きく、耐震性からその重量の軽減や台風による飛散なども考えなければならないだろう。

太陽光発電は20年前から建材一体型で開発している。セル・モジュールを仕入れ、自社の金属屋根材と合体させた。一体型は負の風圧に強く、耐風性能に優れる特徴もある。一方、架台の上にモジュールを設置すれば発電量を確保し、コストも安いが屋根の美観性が劣る。そこで下ぶき材の上に金属垂木を付け、そこに屋根材一体型の太陽光発電モジュールを屋根材として施工するシステムも開発した。ポイントはモジュールと屋根の間に空気が流れる層をつくりモジュールの温度を上げないこと。また、太陽光発電メーカーのモジュールをそのまま屋根材として施工するシステムも確立している。現在ニーズとしてあるのは、屋根の意匠・美観性+発電性能だろう。また、太陽光発電メーカーはモジュールの保証をするが雨漏りなどの保証はしないので、きちんとした施工体制を取ることも求められている。
元旦ビューティ工業㈱:http://www.gantan.co.jp/

横浜企業経営支援財団:http://www.idec.or.jp/

 
< 前へ   次へ >

支援企業・団体

連載/コラム

広告主募集

 
ホーム  |  スタッフ募集
Copyright 2004-2007 横浜産業新聞 - 横浜における情報産業の情報発信「ハマビズ」 - All rights reserved.
横浜産業新聞に掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は横浜産業新聞またはその情報提供者に属します。