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広域産学連携・大学の"知"を活かす(第1回)-IDEC・ものづくり支援 プリント
2010/05/11 火曜日 17:24:03 JST

チタンの切削加工で需要開拓
既存の設備に新技術を加える


横浜企業経営支援財団(IDEC)は全国産学連携広域ネットワークを活用し、市内企業の製品開発・技術力の育成を目的に平成22年度、「ものづくり技術」「次世代センシング技術」「環境技術」「アグリフードビジネス」の4テーマで支援事業を行う。市内企業に産学連携をどう伝え、何を支援するのか、テーマごとにキーマンとなるリエゾンプロデューサーにその内容を聞いた。第1回は「ものづくり技術」。

■大学の研究をものづくりに

横浜市技術リエゾンプロデューサーの鹿田洋氏ものづくり技術で注力するのは難削材と金型の機械加工だ。なかでも難削材のチタン加工は今後、多くの需要が見込まれている。チタンは軽量で耐熱、耐久性に優れ、人体との親和性にも優れていることから航空機、スポーツ用品、医療などさまざまな分野にニーズがある。ただ、チタンには切削時の熱を逃しにくい特徴があり、加工には工夫が必要となる。IDECが市内の中小企業にヒアリング調査した結果、チタン加工を今後の技術課題とし、その解決策を求めている企業が少なくないことが判明した。

一方、IDECと連携する大学にはチタンなどの難削材加工の研究で成果をあげている研究室が多くある。これを企業ニーズとマッチングすれば新たな技術開発に結び付く可能性が大きい。そこで難削材加工をテーマに最新の大学の研究情報を産学交流サロンを通じてセミナー形式で市内企業に提供し、必要に応じて企業と大学も結び付ける。横浜市技術リエゾンプロデューサーの鹿田洋氏は「たとえば航空機エンジンやインプラント、人工関節に至るまで、今後大きな成長が見込める市場にチタンは不可欠で需要のすそ野が広い。これに応えるためには3次元で精密加工する技術を確立しなければならない」と指摘する。

■最新情報からヒント

では、切削加工を行うのに新たな設備が必要なのだろうか。これについて同氏は「すでにステンレス加工など難削材加工の経験があれば、それほど技術的なハードルは高くない。これまでのノウハウに新しいアイデアを加えれば十分に可能となるはず」とする。関心を持つ企業ならセミナーの最新情報から技術上のヒントを得る方法もあるし、さらに一歩進んで大学との共同研究で新しい加工法を確立することもできる。産学連携でしっかりとした研究開発計画を立案して申請すれば、国などからの補助金も視野に入れられることになり、実際に獲得に成功した例もある。

これまで行われたチタン切削に技術に関する産学交流サロンは次の通り。
第1回「医療機器と金属系生体材料」(物質・材料研究機構生体材料センター医工連携チーム 大森健一特別専門職)/「航空エンジン部品の加工における重要な基礎知識」(IHI航空宇宙事業本部 落合宏行技監)/「難削材(チタン等)加工用切削油剤の種類と塩素フリー切削油剤の可能性」(ユシロ化学工業技術本部第1技術部 奥川道彦主事) 
第2回「最新工具による難削材(チタン合金等)加工のポイント(航空機関連部品)」(オーエスジー企画部CSRセンター顧客サポートチーム 中野慶孝氏)/「難削材(チタン等)加工用工作機械の特徴と加工事例」(牧野フライス製作所厚木事業所加工技術本部 佐々木有朋部長)
第3回「チタンの現状と将来 加工の勘所」(日本チタン協会 伊藤均部長)「最新工具(CBN等)による生体医療用材料(チタン等)の高速切削技術」(金沢工業大学 新谷一博教授)
第4回「真空装置のためのチタンの加工・溶接とその適用事例」(山口大学大学院理工学研究科エネルギーデバイス工学 栗巣晋揮准教授)/「最新工具によるチタン等の難削材加工のポイント」(サンドビックコロマント事業部営業技術本部 羽垣内勇部長)
第5回は来る5月31日(月曜)に、鶴見大学による「歯科治療におけるチタン」、ジェイネットによる「微小径工具の芯出し・測定装置の特徴」、埼玉県産業技術総合センターによる「燃料噴射用ノズルへの微細深穴加工」の3講演を予定する

■金型は9月以降スタート

一方、金型の機械加工は9月以降、同様に産学交流サロンなどを通じて順次、技術情報を発信する予定。IDECのヒアリング調査でも金型加工に関連する市内企業約250社の中には高い関心を示す企業も多く、産学連携により新技術の開発に結び付きそうだ。金型はカメラや家電、自動車など、多くの工業製品の量産のために必要な重要技術であるが、低コストの周辺諸国に生産を移す現象が続いていた。ところが最近では品質、納期、トータルコストの点で優位な国内へ生産が一部回帰しており、ノウハウを含めた金型の製造技術の重要性が再認識されつつある。広域連携大学では岩手大学などの金型研究や設備が先行しており、同分野で先進的な市内の連携大学などとも協調して、これら大学の研究成果を市内企業で吸収、活用することをIDECは期待する。

情報発信の場となる産学交流サロンは、これまで大学と企業との出会いの場ともなっているが、関連する企業が集まるため、企業間での交流も盛んでビジネスチャンスも生まれている。これも同サロンの魅力のひとつとなっているようだ。

(財)横浜企業経営支援財団:http://joint.idec.or.jp

 
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