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先進企業のCSR(第18回)-共創事業という可能性 プリント
2009/11/09 月曜日 07:10:05 JST

公民連携で新しいCSRの形
ショーケースとなる横浜市


横浜市は10月21日、新たなCSRの可能性をさぐる「共創オープンフォーラム・ヨコハマ」を開催した。共創とは公民連携により新しいサービスなどの価値 を生み出すこと。市は平成20年度から共創推進事業を行っており、オープンフォーラムでは講演とパネルディスカッションでCSRのあり方について議論を深 めた。(以下、パネルディスカッションの模様を再構成してお伝えします) 
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<パネリスト>
日本IBM㈱社会貢献部 長川嶋輝彦氏/市教育委員会事務局総務部長 内田茂氏/日産自動車㈱電子技術開発本部IT&ITS開発部エキスパートリーダー  二見徹氏/日産自動車㈱ グローバルブランドコミュニケーション&CSR部課長 菅慶太郎氏/市地球温暖化対策事業本部長 信時正人氏/㈱大川印刷社長  大川哲郎氏/市共創推進事業本部長 土井一成氏/コーディネーター 横浜市共創推進事業本部担当部長 小林賢次郎氏/コメンテーター ㈱日本総合研究所 ESGリサーチセンター長 足達英一郎氏

■なぜ共創でCSRなのか

小林 企業は、社会的な価値を高める時代となった。行政と共創すれば何か新しいCSRが生まれるかもしれない。
内田 実際、今年4月に開校した横浜サイエンスフロンティア高校は、日産や日本IBMなど企業による教育支援で実現した。"英才教育"として海外のメディ アにも取り上げられ話題となったことはご存知通り。キャリア教育は一般の教育のなかに、社会の情報を取り入れることができるので刺激があり効果的だ。
信時 温暖化防止ということでは行政と企業との付き合い方がなにより大切だ。たとえば、日産の行っている公共交通と電気自動車が一緒になって環境都市を創 造する"プロジェクトZERO"などは、国内でも初めての試みだ。世界的にも珍しく横浜がショーケースになっている。低炭素社会は企業と市民が主体となっ てはじめて実現する。また、市以外では北九州市は行政と地元企業との付き合い方が深く参考になる。行政は企業に一方的に求めるのではなく、共に人材、技術 という資産を活かすよう努力することが大切だろう。
土井 企業から一番言われるのが行政の「タテ割り体質」。こうしたことを取り除くのが共創のコンセプトだ。企業と行政をマッチングさせるため、市にある 40ヵ所の組織を横断的にながめ、必要なセクションと企業をつなぎたい。共創事業については今年9月末までに105件の提案がある。これは月平均7件の提 案だ。このなかから環境、福祉、教育の分野で15件が実現した。横浜というエリアには優れた人材が非常に揃っていると思う。

■遅れている日本のCSR

小林 世界的に見ると日本のCSR はどうなのだろう
足達 日本のCSRへの投資は6000億円程度しかない。欧州は投資信託や年金基金などで運用額の10%がCSRを行う企業に投資され、SRIでみればじ つに200兆円のレベルになる。いうまでもなく評価基準にグローバルスタンダードはない。ただ長期的な企業業績にCSRが結びついているかどうかで投資先 として判断されている。特に環境分野はそうだ。
川嶋 CSRはその企業のトップの意思を表しているように思う。したがって、企業によってその位置づけが変わってくる。たとえば、アフリカに人道的支援を しようと雇用を創出するために現地に工場を作った例もある。企業によってはまずビジョンを決め、それに基づき事業計画を立てている。
大川 中小企業のCSRは"志"を伝え続けるしかない。現実に感じたことを素直に伝え続ける。CSRの基準は社内外の評価だと思う。たとえば社員が元気か、取引先は喜んでいるか、自分の会社の評判はどうか、これが一番の判断基準となる。
菅 格付け会社に格付けしてもらっているが、社内を刺激するツールとしても利用している。そもそもボランティアから始まることが多いので、CSR活動は見える化しないと社内で進展しない。

■パートナーの選び方

小林 どのような基準でCSRのパートナーを選んでいるだろうか?
 当社では環境、教育、人道支援を柱としており、このテーマに沿う活動をしていればすべて検討対象となる。ただ、パートナーには経済的な基盤も必要で、 またそれを実行することで、どの程度の客に活動内容が届くのかといった投資効果も考える。基本的に本業とは切り離してそのヨコでやるものだと思っている。
川嶋 教育にも力を入れているが、そこで感じるのは日本の教育はトップダウンだということ。講師の派遣も学校側はなかなか受け入れられない。そこで教育で活躍しているNPOと一緒にやっている。
大川 当社は名刺の裏にNPOとの協働と書き積極的に取り組んでいる。地元で100年以上やっていればパートナーとなるNPOの評判はわかる。また、協力依頼がきても物品の提供などは原則していない。できるだけ身の丈にあわせた活動をしたいと思っている。
土井 共創事業では提案があったらまず議論する。それから関係各部門に打診して、そのなかから形にしていく。15件はこうして生まれた。提案者同士が現場でやろうという意欲が大切。
信時 提案は多く寄せられる。パートナーとなる企業は市民にとって大きな資産だと思う。そのネットワークを生かし、また継続的な関係をどう作るかも重要だ。
内田 市内には513校27万人の児童生徒がいる。教育委員会はそこにさまざまな教育の機会を提供したい。企業と協働でCSRに取り組むこともそのひとつだ。

■グローバルな視点が大切
小林 地域との係わり合いをどうしているか
二見 CSRの一環として中国北京で渋滞解決のお手伝いをした。そこで培ったノウハウは北京以外でも通用する。とくに環境問題となれば一定地域だけにとど まらない。たとえば横浜では黄砂の対策をしているが、これはグローバルな問題として捉えられる。一方で企業にはビジネスチャンスになる可能性もある。
足達 じつは経済活動にCSRが入ると、企業にとっては怖い存在になるといわれている。というのは景気が悪化しても止められないからだ。止めてしまうと、それまでの信頼が立ちどころに落ちる。これを回復するのは容易なことではない。
大川 中小企業にとってCSRは社員を元気にする楽しい活動だ。なにより地域に受けいれられる企業になればビジネスにもプラスになる。大企業と違い中小企業は本業のなかにいかにCSRを取り込めるかが大切だと思う。

(参考)
横浜サイエンスフロンティア高校
   http://www.city.yokohama.jp/me/kyoiku/sidou2/koukou/sfh/
プロジェクトZERO
   http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2009/_STORY/090304-02-j.html
 
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