インタビュー:横浜市経済観光局 政策専任部長 長島敏晴氏
2008/03/25 火曜日 22:21:35 JST
  人材確保と企業交流が新横浜の明日を拓く
   ~大手企業と産官学の連携構想も~

■オフィス賃料は東京の3分の2!
3月15日からすべての新幹線が停車し、また26日には新築された駅ビルに高島屋もオープンするなど、新横浜はますます活況を呈してきた。その駅周辺には現在300社を超えるIT企業が集まっており、それも他県のように自治体の企業誘致によるものではなく、新横浜に魅力を感じた企業が自然に集まった結果だ。
限られた地域にこれほど密集している例は国内で他にないという。この魅力ある新横浜の現状と市の支援策について、横浜市経済観光局ライフサイエンス・新産業誘致担当の長島敏晴政策専任部長に話をうかがった。
ts-080325-1.jpg まず横浜の魅力について、こう長島氏はこう分析する。
「首都圏のなかでもビジネス環境が大変優れている。たとえば、オフィスの賃料は東京の3分の2と低コストで、人材も集めやすい。また、新幹線や羽田空港、成田空港へのアクセスがいいし、それに横浜に社屋があると企業のブランドイメージの向上につながる」
同氏が指摘するように横浜のオフィス需要は増加しており、現在205万平米ある業務ビルの床面積は平成22年までに、みなとみらい地区と新横浜地区にさらに45万平米増える予定だ。これは首都圏における横浜のビジネスのポテンシャルが急速に高まっていることを示している。さらに「この大量のオフィス需要にともなう企業の進出は、新横浜のIT産業にとっても新たなビジネスチャンスとなる」と見る。

■官の役割はコーディネータ
これまで、市はIT産業を育成するためにさまざまな支援を行ってきた。そのひとつが、新横浜ITクラスター交流会だろう。これは新横浜のIT企業が一堂に会すことで新たなビジネスチャンスを生もうとする意見交換会で、年に4回開催しており今年4月で21回目を迎える。
「技術革新のスピードが非常に速いIT業界に対応するため"官"がコーディネータ役を務め、"民"と"民"との交流を支援している。多くの企業がITの要所となる技術を持っているので、それぞれの企業が自由に発言し意見を交会しあえば、新たなビジネスのタネがう生まれるのではないか」(長島氏)。

■人材確保も産官学で
さらに、市が力を入れている分野のひとつに「人材確保の支援」がある。IT業界は少子化や若者の理工離れなどを背景にして人材の獲得が年々難しくなってきており、これが将来、企業活力を失わす原因となるのではないかと懸念されている。そこで、市はこの人材確保のバックアップすることで、IT企業を支援しようというのである。
「最近は中国やインドの企業も日本に進出を始めている。これからは国内の企業だけでなく、海外のIT企業とも人材の獲得競争をしなければならない」と危機感をみせる。
市ではこのような現状を踏まえ、昨年から市内の各大学に働きかけると求人のためのネットワークの構築を始めた。たとえば横浜国大とは産学官による合同企業説明会をスタートさせた。平成19年度に実施された第1回目の合同企業説明会には市内のハード系、ソフト系、コンテンツビジネス系などの企業17社が集まり、学生向けに企業PRをおこなった。これは今年も開催予定だという。

■オフショアをバックアップ
また、中学、高校生にもITに興味を持ってもらおうと、市内の専門学校2校と連携し自作のソフトでロボットを動かすセミナーも昨年から始めた。
さらに、海外の人材活用ということでは、国内企業がシステム開発・運用管理などを海外に委託する事についても研究会を開いている。これは「オフショア開発セミナー」の名称で行われているもので、おもに中国やインドなどに仕事を委託する際の問題点を知るセミナーだ。研究会では実際の開発事例を取り上げ、どのような技術ならオフショアに向いているのか、また失敗しないためにはどうすればいいのか、主に中小のIT企業向けに情報を提供している。
「これからは横浜に進出する大手企業と連携し、産学官のパートナーシップにも力を入れる」と長島氏は将来像を語り、横浜や新横浜地域がさらに活性化することを示唆する。
横浜のIT産業は今度さらに大きな成長が期待できそうである。