中小企業のIT戦略(11:最終回))-IT導入のポイント |
2008/03/02 日曜日 19:56:16 JST | |
~いい会社を作るためのIT導入のポイント~ 中小企業において、いい会社を作るためにどういう風にITを活用していくか。 何回かに分けて考えて来たが、今回が最終回であるので、今まで書いてきたことのまとめをポイントとして示しておく。 1 ITは手段である ITは目的ではなく、手段である。 何かのためにITを導入し、活用するのであって、ITを導入すれば何かが達成されるわけではない。目的を明確にし、目的を実現するためのIT導入を目指そう。 2 ITは中小企業に必須ではない 以下のような条件に当てはまる会社にはIT導入は向いていない。 ■社内を流れる情報がほとんどない ■仕事が属人的で代替が効かない ■間接業務が少なく、業務の大部分がモノ作りやサービスそのものである ■仕事の段取り、進め方が毎回変わる ■仕入れ、在庫、仕掛、販売などが記憶できる程度の数量、種類である ■納期が長い、部品点数が少ない 自社がIT導入に適した業態、業務内容なのか確認しておきたい。 他所がうまくいたから自分のところもうまくいくというものではない。 3 IT導入の目的は意思決定の正確化、効率化である ITが得意なのは情報流路の整備と定型的なデータの大量高速処理である。 ITと接点を持つ業務を改革し、権限を委譲し、意思決定をオープンにすることで、初めて売上増、生産効率向上、業務改善などに結びつくのである。 4 IT導入はトップダウンで遂行する IT導入は投資であって経費ではない。 投資は経営者が決断するものであり、IT導入はトップダウンで遂行されるべきものである。 ITは目に見えないものであり、その時点では人間系で賄われており問題が認識されにくく、その効果も遅効性であるため投資ポートフォリオでは後回しにされやすい。 しかし、ITは経営の根幹である意思決定に寄与するものであり、会社の見える化、リードタイム短縮、効率化に役立つ、経営者のためのものである。 戦略的な経営判断でIT投資を評価することが望まれる。 5 IT導入は専門家に相談しよう 中小企業のIT投資は5年から10年一度の事業であり、このために社内に専門家を揃えておくことは難しい。 情報システム部といったセクションを設けている会社もあるが、多くはPCのヘルプデスクやネットワーク管理などが主業務でIT投資の知識や段取りに精通しているわけではない。 すなわち中小企業では ・日々の仕事が忙しい ・ITのことがよくわからない ・IT導入の段取りが分からない ・仕様書が書けない ・ITベンダー(開発業者)を決められない ・見積もりを評価できない ・プロジェクト経験者がいない といった困難がある。 結婚式や出産のような人生にたまにしか発生しないイベントには専門家を使うように、IT導入においても外部専門家の活用を薦めたい。 6 ITベンダーは相性で選べ IT導入は専門ベンダー(開発業者)に依頼することが多い。 費用や仕様、納期、品質が満足されることは重要であるが、それ以上に大切なのは相性である。大手ベンダーに頼めば安心と考えている向きもあるが、大手ベンダーが真にやりたいのは大きな仕事である。自社の会社規模に見合った、IT導入について目標を共有しパートナーとなれるベンダーを探すことがIT導入成功のカギである。 7 IT導入のキモは逆プロセスにあり ITベンダーはITの専門家ではあるが、あなたの会社の業務に精通しているわけではない。瓜二つの業務プロセスを持つ会社などこの世に存在しないといってよい。したがって、何をどう実現したいのかをベンダーに十分伝えることが大切である。とくに中小企業の業務の肝である、逆プロセス、例外処理、特急処理、異常処理などどこまでコンピュータに任せ、どこから人間が関与するのか摺り合わせておく必要がある。 自信がなければ自社の業務をIT語に翻訳してくれる専門家を雇おう。 8 IT導入が終わって道半ば IT導入が終わり、ベンダーが退去してからが実は本番である。 導入したITシステムを業務の中で違和感なく日常的に使いこなしていくには、かなりの日数と努力が必要である。ITシステムが業務の血となり肉となって、初めてIT導入が完了したと言える。 9 ITは進化中である ITは現在進行形の技術である。数年前までは技術的に不可能と思われたことが実現したり、コストが急速に下がったりすることがよく起こる。IT導入は先行利得を得やすい投資なので、IT動向を注視し、登場した技術が本物か、自社に活用できるかどうかを見極めながら採用、導入していきたい。 10 まとめ 最後にIT導入に当たっての留意事項を掲げておく。 ・経営戦略を実現するITを目指す ・全体で考える戦略が必要 ・中小企業は人間系が基本 ・定常的、繰り返し作業をITに置換 ・ITに馴染まない例外や特例は人間系で処理 ・指令系から状態把握、更に内部統制へ ・上流から下流へ展開する ・業務改革は全ての関係者の利益となるように ・無理はしないで確実に成功を目指す NPO法人ITC横浜副理事・未来計画代表 ITコーディネータ 齋藤順一 |