テクニカルショウ2012(第3回)-出展者紹介:横浜市立大学 |
2012/01/20 金曜日 18:44:37 JST |
ナノカーボンでリチウム電池を急速充放電
燃料電池の白金コストも大幅削減が可能
将来にわたる電力需給の逼迫が心配されるなか、横浜市立大学は産官学でナノテクノロジーを使い、蓄電池などの性能とコストを大幅に改善する研究を進めている。同大学院生命ナノシステム科学研究科、ナノシステム科学専攻長の橘勝教授のグループは、カーボンナノウォールのリチウムイオン二次電池負極材への応用と、同燃料電池への応用という2つ技術を産業技術総合研究所とIHIとともに開発中だ。
■カーボンナノウォールの応用研究はこれまで行われていない
カーボンナノウォールは新規のナノカーボン材料のひとつで、これまでその存在を知られ、物質特性も2002年に発表されたが、応用研究はこれまで行われていない。カーボンナノウォールは基板に垂直に配向したシート状の物質で、微細構造は完全生の高い数十ナノメートルの均一なグラファイト・ドメインから構成され、電子顕微鏡で見ると小さなシート(グラファイト・ドメイン)がモザイク状に組み合わさっている。
リチウムイオン二次電池への応用は、このカーボンナノウォールを電極層の負極活物質として用いる。特徴は、グラファイト・ドメインが内部抵抗を少なくするため電力損失を抑えられ、これまでの黒鉛粉末を使用した電極層と比べ、より急速な充放電が可能になる。橘教授は「これまでより10倍近く速く充放電することが実験で確認されている」とする。
実用化されると、たとえばEV(電気自動車)の場合、きわめて短時間で充電できるだけなく、電力の供給能力が増すため、アクセルを踏んだときの加速が格段に向上することになる。
■燃料電池の白金使用量を少なくする
一方、燃料電池への応用はカーボンナノウォールのドメイン境界(グラファイト・ドメイン同士の隙間)に注目し、そこに白金を担持(付着した状態)させ触媒電極とするもの。燃料電池は水素と酸素を利用して電気をつくり出す構造で、これまでの触媒電極も白金を担持させたカーボンを使用している。
ただ、白金は高価でかつ希少貴金属であることからコストが課題となっている。そこで橘教授のグループは、ドメイン境界に白金を坦持させることを考えて“溶液還元法”を開発し、ナノメートルサイズの白金粒子を担持させる実験を行った。この方法で活性化した触媒は、市販されている最高性能の燃料電池と同等かそれ以上の活性を示した。
実用化されれば、使用する白金を減らすことができるのでコストを大幅に削減できる可能性もある。
このカーボンナノウォールの研究はテクニカルショウでも発表され、同大学の出展ブースでパネル展示され、2月1日水曜日の11:40分?12:10分には会場内の産学連携ワークショップで講演も行わる予定。
横浜市立大学 橘研究室http://nanomate.sci.yokohama-cu.ac.jp/
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