横浜リエゾンポート2010(第3回)-慶應義塾大学
2010/11/02 火曜日 07:33:21 JST

マイクロセンサで高付加価値の野菜をつくる
含水量を計測し"水やり"をコントロール

                                  慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師、三木則尚氏
■水ストレスで野菜は甘くなる
針のようなマイクロセンサを茎に刺し、その作物に適した水のやり時を知らせる研究がおこなわれている。慶應義塾大学が「横浜リエゾンポート2010」のポスターセッションとワークショップで公表する「潅水農業用刺入型植物含水センサ」だ。
yrr-3-1.jpg理工学部機械工学科専任講師の三木則尚氏のグループは、ナノ・マイクロ加工技術を応用したセンサで植物の含水量を測り、植物がいまどの程度の水分を必要としているかを知る研究を続けている。
背景には、農作物の高付加価値化がある。たとえば、果実のように甘いフルーツトマトは、従来のトマトにない需要を生み新たなマーケットを開拓している。こうした取り組みは農家にとって大きな魅力だ。
じつは、このフルーツトマトは、生育に支障がでないぎりぎりの潅水(水やり)で栽培している。与える水が少ないほど糖度が高くなるのである。三木氏は「野菜は水ストレスを与えると、より甘みを増す。これはイチゴ、マンゴ、ブドウなどトマトに限らない」とする。 
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■農家と企業の協力が必須
糖度が増せばより高付加価値の野菜をつくれる。ただ、農作物への潅水はこれまで農家が勘と経験でおこなってきた。このため生産者も限られ、高付加価値の野菜や果物の種類も少なかった。そこで同グループでは、センサを利用し植物の含水量を計測することで各農家が栽培しやすくなることを狙う。さらに潅水システムとして自動化すれば生産量の増強にもつなげられる。
すでにセンサの基本的な技術は確立しているが、実際にセンサを利用した試験栽培はこれからだ。また、実用化するにあたってはセンサを低コストで量産化する必要もある。
そこで横浜リエゾンポート2010では、この植物含水センサを農業生産者や企業などに情報発信する 。
研究で試作したセンサは、ガラス管を細く伸ばして加工したものだが、量産には材質から加工方法まで製造業のノウハウが必須。さらに周辺機器とのパッケージングなど事業化にあっては企業の協力が不可欠だ。

■名刺サイズの環境センサも公表
一方、同グループは「潅水農業用刺入型植物含水センサ」とは別に、携帯性に優れた環境物質のセンサも同時に公表する。これは「超高感度環境センシングを実現する表面増強ラマンチップ」。
表面増強ラマンは、ラベルフリーで超高感度に環境物質を検出する手法として期待されている。同氏は銀ナノ粒子の局所的折出技術と、マイクロ流路や電極の加工技術を組み合わせ、超微量サンプルでの検出、濃縮、分離、混合などの処理をチップ状でおこなう表面増強ラマンチップを開発した。
試作は名刺サイズのカードにチップを埋め込み、その流路に超微量のサンプルを置くだけで検出できる。実用化されれば、周辺機器を含め装置を極めて小型化することが可能だ。これまで、ラボにサンプルを持ち帰えらないと含有の有無がわからなかった環境物質をその場で検出でき、機動性と大幅な省力化につなげられるという。