先進企業のCSR(第28回)-永続的な成長企業を分析 |
2010/04/11 日曜日 10:40:24 JST | |
事業発展のヒントはCSR 5つのテーマで論文まとまる 永続的成長企業研究センター ■地域貢献企業68社を分析 一般に企業の寿命は20~30年ともいわれる。技術革新やニーズの変化に対応しきれず成長が止まり、その後停滞から衰退へと転じることが多いからだ。ところが、その一方で"老舗"と呼ばれる企業もある。では、世代を超えて事業を成長させるためには何が必要なのだろうか。このほど、横浜企業経営支援財団(IDEC)を母体とする永続的成長企業研究センターは「永続的成長企業研究」をタイトルとした論文集をまとめ、中小企業が長年にわたり発展していくための要素を分析した。 調査対象は横浜型地域貢献企業に認定された68社。いずれも企業規模と関係なく業績が安定し、従業員のモチベーションも高いことが知られている。調査の結果「中小企業にこそCSRを経営に取り込むことが大切で、地域経済への影響も大きい」とし「認定企業には永続的な事業を行うためのヒントが多く隠されている」と結論付けた。調査は従業員の満足度から顧客志向までアンケートにより行った。 ■商慣習にこだわらず意思決定 各論文はIDEC職員で中小企業診断士の資格を持つ研究員5氏(柴田仁夫氏、山崎文氏、槇野彰子氏、岩田健氏、冨永雅巳氏)がそれぞれのテーマでまとめた。巻頭言は法政大学学事顧問で地域活性学会会長の清成忠男氏が執筆し、早稲田大学政治経済学術院教授の石田光義氏、横浜市立大学CSRセンターLLPセンター長の影山摩子弥氏、IDEC元常務理事・事務局長の吉田正博氏の3氏が論文を寄稿した。内容は次のとおり。 柴田氏は「経営理念が経営意思決定に与える影響に関する一考察」で、認定企業の経営意思決定はコンプライアンスが最優先され、商慣習や業界慣行の影響を受けることが非常に少ないと分析。ステークホルダーと経営理念の間には整合性があるとした。また、山崎氏は「社会貢献活動に取り組む動機に関する一考察」で、地域重視の取り組みにより結果として地域と良好な関係が築け、事業に好影響を与えたと分析した。 ■地域密着に経営メリット 一方、槇野氏は「地域内雇用が地域経済に与える影響について」をテーマにまとめ、認定企業が地域の雇用の受け皿としての役割を担い、その地域志向が事業活動にプラスに働き、経済にも好影響を与えるとした。岩田氏は「消費者・顧客対応の手法と業績に与える影響の相関」を分析。消費者などへの対応と業績との間の相関関係が調査で明らかにならなかったことから、企業は目標に対して実行の度合いをどのように計測するか、などを検討することが有効と結論付けた。 冨永氏は「横浜型地域貢献企業の地域密着戦略について」を調査。ほとんどの企業が地域との密着で経営上のメリットを感じていることを明らかにし、社内のコミュニケーションが活発となったことで従業員の定着率が向上し、モチベーションのアップで取引先への信頼度も増したとした。 これまでCSRに関する研究は一般に大企業に偏りがちだったが、永続的成長企業研究センターでまとめた論文は中小企業を対象としており、ほかに例があまりない。同センター研究員の柴田氏は「CSRは大企業の経営視点で見ることが多いが、中小企業の経営にこそ必要不可欠。CSRはサステナビリティ。論文集というアカデミックな分野からアプローチしており、ぜひ有識者に読んでもらいたい」と語っている。 (取材協力:横浜市/横浜企業経営支援財団/他) 「永続的成長企業研究」:http://www.idec.or.jp/csr/kenkyucenter.html 横浜企業経営支援財団:http://www.idec.or.jp/ |