ユーザ中心設計のすすめ(第49回)―感性をデザインする |
2010/02/28 日曜日 12:53:36 JST | |
今回は感性についてのお話です。 感性とは 皆さんもよく耳にしたり使っている言葉と思われます。この言葉の意味ですが大辞泉では「1 物事を心に深く感じ取る働き。感受性。2 外界からの刺激を受け止める感覚的能力。」とあります。私たちが量販店に行ってデジカメを購入する際は、外観の美しさ、手に持った際の感触、シャッターの押し心地などで製品を選びますが、これらがまさに感性に訴えかける要素となっているのです。 これは今までのような性能、使いやすさ、価格といった価値を超えたプラスアルファの価値でもあります。この感性価値を高めるためにはどうすればよいかが企業においては重要なテーマとなっています。 今、ユーザ中心設計を実践している弊社においても、ホットな話題でもあります。 ユーザビリティの定義には「有効さ、効率、満足度」の3つの項目がありますが、その中の「満足度」は、ただ使いやすいだけでは獲得は難しく、ユーザの感性に訴えかけるものがないと実現されません。 この感性は英語でもkanseiと記述され国際語にもなっています。日本感性工学会も発足され、活発な活動がなされています。 現状の問題 通常、デザイナーは自分の感性を信じてデザインを行なっています。ターゲットユーザを意識しながら、また競合製品を眺めつつ、「他社との差別化するにはこんなデザインかな~。でもあまり飛んだデザインだと受け入れてもらえないかな~。」といったようなことを考えながら、属人的にデザイン検討を進めます。 これがぴったりユーザの感性に合致すればヒットしますが、外れてしまってまったく売れないという悲惨な製品も多く見うけられます。 感性を調べるには では、感性を事前に調べて計画的に「売れる」デザインにするにはどうしたらよいのでしょうか。それは、ユーザの嗜好性(好き、嫌い)に影響を与えるデザイン要素を明確にすることにより可能になります。 その際によく使われる、質問紙(アンケート)による方法をご紹介します。製品のデザインの嗜好性を調べる際には、まず感性ワードの抽出を行います。その後、実際の製品を10機種分用意しておき、数十名の被験者に見たり触ったりしてもらいながら、感性ワードをSD法で評価してもらいます。たとえば、「精度感のある⇔精度感のない」、「カジュアルな⇔フォーマルな」、といった数十個の感性ワードを、「非常にそう思う、そう思う、ややそう思う」といった評価を主観でチェックしていただきます。最後に、「好き⇔嫌い」についてもチェックしていただきます。その回答結果を分析し、「好き⇔嫌い」に最も影響を与える感性ワードを4種抽出します。さらにその感性ワードの評価ポイントが高かった製品の特徴をラフ集合で分析してデザイン要素の抽出を行います。 たとえば、「精度感のある⇒モノトーンカラー」、「頑丈な⇒金属光沢」、「カジュアルな⇒明るいクリアな色」というような感じの結果となります。 このように抽出された明確なデザイン条件を基にして検討を進めることで、「売れる」デザインになる可能性が格段と高くなるわけです。 さて、みなさんの会社の製品やサービスの感性品質はいかがでしょうか。 事例:弊社の「感性デザイン」 http://www.ueyesdesign.co.jp/rd/ceatec2006.html 参照:日本感性工学会サイト http://www.jske.org/index.php *本コラムに関するご質問、ご感想や業務のご相談などもお気軽にどうぞ。 http://www.ueyesdesign.co.jp/contact/index.html の「業務全般のお問い合せ窓口」よりご連絡ください。 みなさまの声をお待ちしております。 ===================================== 【お知らせ】 1.「モノ・コト尺度」でユーザをセグメントいたします。 <ご案内サイト> http://www.ueyesdesign.co.jp/service/service_scale.html 2. Android搭載携帯電話(HT-03A)のユーザビリティ評価レポート好評販売中! <ご案内サイト> http://www.ueyesdesign.co.jp/report/p090616_android.html ===================================== 過去記事一覧(第1回~第48回) 筆者プロフィール 鞆 幾也 (TOMO, Ikuya) 1988年 金沢美術工芸大学工業デザイン科卒業。 1990年 株式会社ノーバス設立に参画。 2003年 株式会社ジー・テック・ノーバス設立。代表取締役に就任。 (2005年10月株式会社U'eyes Designに移管) 2005年10月から2007年9月まで株式会社U'eyes Designの上級執行役員に就任。 現在はU'eyes DesignのUCD上級コンサルタントとシニアアドバイザーを兼務。 医療機器のプロダクトデザインを行いつつ1996年頃よりユーザインタフェースデザインの業務をスタート。 特に1998年頃から携帯電話の操作仕様設計から画面のグラフィックデザインまで数多くの端末の開発支援をおこなう。 UCD開発支援の実績としては鉄道自動券売機(オムロン製)がある。 株式会社 U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp |