先進企業のCSR(第24回)―(株)神奈川民間救急サービス |
2010/01/31 日曜日 21:35:35 JST | |
地域貢献の視点を事業に活かし 質の向上で赤字企業を黒字転換 ■ベッド・ツー・ベッドに求められるもの 高齢化社会の進展にともない、歩けなくなったお年寄りを病院などに送迎する新たな医療ニーズが生まれた。なかでも救急車に代わる移送手段は重要で必要不可欠となっている。神奈川民間救急サービス(神奈川区東神奈川)はその一助となるよう昭和63年に設立された会社だ。現在25名のスタッフが3台の送迎専用車を稼動させ、利用者は月平均100件を超える。その大半が寝たきりとなった高齢者の入退院や通院である。企業理念は"ベッド・ツー・ベッドの安心と安全"。星崎清美社長は「病院のベッドから自宅のベッドまで、いかに真心をこめて安全に送迎できるかが求められている」と語る。じつは、CSRに取り組んだ背景にはこの安心と安全がある。 ■価格競争で一時は苦境に 同社は数年前まで赤字が続き苦境に立たされていた。タクシー業界などの参入で病院などへの送迎ビジネスは価格競争が激しく、経営が成り立ちにくかったのである。だが、その一方で、業界内にはコスト削減によるサービスの低下で、移送中に患者を落としてしまうような事故があることも聞いていた。そこで新社長となった星崎氏は利用料金ではなくサービスに注目した。民間救急として、どうすれば地域から求められる会社になれるのかを追求したのである。まず手をつけたのが受付時間だ。夜間でも安心して頼めるように24時間の受付体勢とした。そしてコンプライアンス(法令順守)を重視し、優良事業者団体の全国民間救急サービス事業者連合会に加盟。さらに、病院が求める医療関連サービスマークも取得した。また、送迎車も長時間利用できるよう医療用酸素ボンベなどの医療機器を設置し、付き添いの人も立って歩けるように天井を高く改造した。こうした設備投資や認証マークの取得は経営をそれまでより高コスト体質にしたが、顧客である地域住民から高く評価されるようになった。「タクシーと比べれば料金は高いが、送迎は高齢者の入退院や通院に欠かせないサービス。安全と安心につながる質の向上こそが求められている」とする。 ■マークが営業できっかけつくる 横浜型地域貢献企業にも認定された。星崎氏は「申請書類を見たとき、正直いって小規模企業に取得は大変だと思った。ところが、書類をつくるうちに普段行っていることが、じつはCSRの理念と同じだったことに従業員全員が気がついた」と語る。さらに、認定マークの取得で病院などを訪問したさい「公共性を重んじる会社として説明しやすくなった」とその営業効果も指摘する。また同社では近隣の法人会が提唱するクリーン大作戦に参加し、事業所周辺の清掃を月1回行っているが、これも全社員が自然と参加するようになった。「社内の活性化にもむすびつき、改めてCSRの大切さを実感」したと同氏は振り返り、今後は経験を踏まえて地域の企業にもCSRの輪を広げていきたいとする。高齢者福祉ビジネスにとって地域社会への貢献は大きな力となっているようだ。 (取材協力:横浜市/横浜企業経営支援財団/他) ㈱神奈川民間救急サービス:http://www.k-minkyu.co.jp/ (横浜型地域貢献企業認定) |