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「情報通信白書」にみる日本のIT産業の現状 プリント
2007/08/06 月曜日 21:10:06 JST

国際競争力が衰えるニッポン
  映像コンテンツには支援策も必要


itc-hakusho.jpg 総務省ではこのほど「平成19年情報通信に関する現状報告(情報通信白書)」を公表した。ここでは同省ホームページからその概要を紹介する。

 白書は情報通信産業が日本経済に与えた影響として、まず「在庫循環」の周期が短くなったことをあげている。

 これはブログやSNSなど消費者自らが参加するメディアが普及したことで、消費者ニーズが的確に把握されるようになり、合わせてコンピューターによる商品の総合管理で効率的な販売を行うようになったためとしている。

また、情報通信産業は比較的立地に影響されないことから、地域経済に影響を与え始めているともした。白書によれば産業をエリアで捉えてみると、製造部門とサービス部門はともに関東が最も高い割合を占めているが、近年は製造部門の企業が関東以外の8地域に活動拠点を移しつつあり、このことが地域経済の発展にもつながったという。(図1-25) 
fig1-25.gif
ソフトの"外注"は2千億円規模 

 ソフトウエアでは国境を越えた業務委託である"オフショア"が急速に進展している。その規模は、2005年で636億円、2010年には約2000億円を達成する見通しで、これは年々増え続けている。(図2-12)理由はソフトウエアの開発者が不足しているためで、今後この傾向が続く限り、海外への業務委託が増えても、国内の開発者の雇用が減少することは考えにくいという。fig2-12.gif
 ちなみに、日本のオフショアの相手は中国が約8割を占めているが、これに対して米国は95%がインドである。これは、日本は言語とコストで発注することが多いのに対し米国は技術力を重視して委託する傾向があるためだという。 

ITで儲からない日本企業 


 白書では日本の情報通信産業の国際競争力についても分析している。それによると、日本の「ICTベンダー」(情報通信の技術に関連する企業)の利益率は、端末・機器分野、デバイス分野、ソフトウエア・ソリューション分野のいずれにおいても、米国、欧州、韓国に比べて低い。 

 また、売上高に占める研究・開発費の比率も欧米と比べて低く、日本は2005年の時点で韓国と同水準となっており、さらに、世界市場に占める日本のICTベンダーのシェアは年々低下しているとした。

 ただ、情報産業に携わる日本のメーカーや販売代理店は、欧米のそれに比べて国内市場志向が強い傾向にある。(図2-23)このため、日本のメーカーは欧米企業などよりも幅広い製品で事業を展開することが多く、これにより販売リスクの分散や幅広い技術の蓄積を可能としている。しかしその反面、各事業部の規模は小さく、関連するコストの負担が大きくなるデメリットも産んでいる。

 なお日本は、IT産業のなかでも材料技術、光学・電子部品技術、機器技術、金型技術に優れた製品が得意分野となっている。 
fig2-23.gif
携帯は第3世代で勝負 

 一方、情報産業といえばその一角を占めるのが携帯電話であるが、世界の携帯電話シェアはフィンランドが1位で、日本のシェアは低下している。また、世界の携帯電話市場は先進国から途上国へシフトしており、その変化への対応が求められている。

 たとえば、第2世代の携帯電話は欧州のGSM方式が事実上の世界標準となっており、日本の企業はほとんどシェアを獲得できていない。ただ、第3世代の携帯電話になると日本が先行しており、その優位性を活かした戦略をどう立てるか重要な課題となっているようだ。

 日本が世界に誇れる情報通信産業のなかに「コンテンツ」があるが、この市場規模は日本で11.3兆円。このうち放送コンテンツは映像コンテンツの約70%を占めており、また映像ビジネスでは海外展開を進めており、海外での実績もあがっている。

 白書では、諸外国の事例をあげながら「我が国においても、海外における新たな販路・放送チャネルの開拓、人材育成等を通じた競争力の一層の強化が必要」とした。 

携帯ネットの人口は減少 

 ところで、高度情報化社会といわれる現代だが、インターネットの利用者数は平成18年末で8754万人に達する見込みだ。(図3-1)ただし、パソコンでインターネットを利用する人が増加した一方で、携帯端末のみでインターネットを利用する人は688万人となり、平成17年末に比べて64・2%減少している。
fig3-1.gif
 なお、携帯電話をはじめとする携帯情報通信端末については、音楽再生・テレビ電話・決済・ワンセグ受信等が可能となり、ネットワーク化と多機能化が進展していると総括している。

 セキュリティについてはウイルスの被害や不正アクセスによる被害が拡大し、高度情報化社会の脆弱性も露呈しているが、多くの個人や企業が自主的に何らかの対策を実施しており、何の対策も講じていない割合は、個人で1割強、企業では3%程度にとどまっている。

 日本を取り巻く世界の情報通信産業は日進月歩で変化している。平成17年度の白書はそんな日本の現状と課題を浮き彫りにしているようだ。 

総務省「平成19年情報通信に関する現状報告特集・ユビキタスエコノミーの進展とグローバル展開」
 http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/pdf/070703_2_bt.pdf

 
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