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中小企業のIT戦略(連載:第3回横浜の中小企業IT事情) プリント
  ~いい会社を作るためのIT導入のポイント~

中小企業において、いい会社を作るためにどういう風にITを活用していくか。
何回かに分けて考えていきたい。
第3回は製造業、建設業を中心として横浜の中小企業のIT事情について考えてみよう。

NPO法人ITC横浜は2005年に横浜市経済局(当時)と協力して、市内の製造業、建設業を中心とした91社のIT活用状況をヒアリング調査した。その結果を基に横浜の中小企業のIT事情を考察してみる。

1.まとめ

 調査結果は以下に示すが、まとめてみると以下のようになる。
横浜の製造業は従前からIT導入、利活用に積極的に取り組んでおり、利活用レベルも比較的高い。経理・会計などの支援業務だけでなく、生産管理、在庫管理など基幹業務にもITが導入されており、経営者のIT導入意識も高い。

建設業では製造業ほどIT利活用は活発ではない。製造業においても企業や業態によってIT利活用状況には差異がある

製造業では基幹業務は指示系までが現状のIT化の実現範囲であり、実績把握、動的計画など情報処理の質的向上が今後のIT化対象である。これらが実現されれば強力な経営ツールとなる。

得意先からは価格低減、納期短縮、小ロット発注対応を求められており、量・質両面で情報増加の傾向にある。この傾向は次のレベルへのIT導入動機付けとなろう。

2.横浜の中小企業IT事情

1)高いIT導入意欲

IT導入状況をみると、従前のシステムとして汎用機やオフコンをあげた企業が約30%ある。オフコンが中小企業に導入され始めたのは80年代後半からで、投資金額は数千万から数億であったことを考えると、横浜市内の製造業・建設業のIT投資意欲は十分高かったと考えることが出来る。
多くの経営者がIT投資に対して、「必要性を感じ継続的にIT投資を実施している」と考えており、前向きである。 
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現行システムのハードウェアとそれ以前に導入していたハードウェアである。PCサーバーとオフコンの両方を使っているような企業もあるため合計は100%にならない。汎用機(メインフレーム)やオフコンがリプレースされPCサーバーに移行しつつある。

売上規模と導入ハードウェアの関係を見ると売上規模が大きい企業が汎用機やオフコンを導入している。
また、ここ5年間のIT投資金額の中央値は1000万~5000万円の範囲にあり継続したIT投資が実現されていると見るべきである。

少ない企業ではPCを買っただけで100万円程度に留まる一方、多い企業では7億円、12億円といったIT投資をしている企業もある。
投資額が少ない企業の中にはIT投資の必要性が薄い、投資効果が見出せないといった意見があった。

2)幅広いIT利活用

 企業のIT利活用は経理・会計などの間接業務系に留まらず、支払・請求管理、生産管理、販売管理など基幹業務への適用も進んでおり、その効果も定型業務の生産性が向上するなどとして、概ね満足しており、特に問題点はないといった状況に見受けられる。ITの導入と利活用は一定のレベルで導入され、活用されていると評価できる。 
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個別原価管理は4割の企業で導入と回答しているが、ヒアリングでは外注仕入や作業は伝票の受け渡しがあるため原価は比較的明確であるが、内製作業が把握できていないというケースが多かった。
したがって個別原価管理に関しては即時データとして把握できるのというわけではなく、手書きの日報などを後日手入力して原価に反映させるというのが実体である。

ERPパッケージを導入している企業もあるが、ヒアリングでは工場ごとに生産体系が違う(部品生産、組立、工場貸)ので工場ごとに導入しているといった回答もあり、いわゆるERPパッケージ(基幹業務を包括する統合システム)を活用しているのではなく、ERPパッケージという名前のついたシステムを導入しているという状況のようである。
一方でEXCELを使って生産管理を行っていて、使用状況を検分してもこれで十分と感じられる企業もあった。

3)確立されていないIT導入方法

 IT導入において、情報の入手や主要な相談先が出入りのベンダーやOA機器業者であり、社内のIT担当者は兼務者が多く、IT導入時の要件説明は口頭でなされ、RFP(*1)の認知度も低いといった状況が中小企業の置かれた現状であり、適切なIT導入プロセスを実施しているとは判断しにくい。
IT導入をどのように進めればいいかというプロセスの周知を積極的に進める必要がある。 
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ベ ンダーに対して口頭で開発内容を説明するという企業が最も多く、仕様に基づいて開発依頼をするという企業は多くはない。
開発にあたって外部の専門家の助言を求めているのは1割程度に留まっている。
IT開発は図面によって情報を伝えることが出来るモノの製作のような手法がないため、RFPなどにまとめて開発内容をベンダーに開示する手法は重要であると考えられる。

4)一定のIT導入効果

 定型業務の生産性向上や経営判断、事業展開が促進されたことにIT導入効果を見出している企業が多い。
一方、中小企業においては非定型業務が多く、人間が介入しないと処理が困難な業務も多く存在する。IT導入で全ての業務が合理化できるわけではないので、どの程度で折り合いを付けるかがシステムを構築するときの重要な指標になろう。
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5)基幹システムの高レベル化

 IT利活用の実体をヒアリングすると、受発注処理や生産指示はITが関わっている事例が多いが、内製作業の把握が紙媒体によっていて月に一度の集計である、建設業においては建設現場の管理が現場監督による人間系管理で本社では把握できていないといった状況が見られた。
製造業についてIT導入の質的レベルを、ヒアリング結果などを基に試みにランク付けしてみると表1のようになる。

見方を変えれば管理台帳や財務会計は主に過去の情報の整理に用いられており、生産指示は現在情報の管理、生産計画や負荷山積は未来に対する情報管理と捉えることが出来る。
企業が過去、現在、未来のどの次元に対して情報管理、活用が行われているかを把握することで、企業の情報管理、活用レベルが評価できる。
調査企業の状況はレベル2~3程度と考えられる。
今後、管理の質的向上を図るためには

・高レベルの実践例を輩出させ、具体例としての目標を与える

・高レベルに対応したITシステムの開発、供給

・高レベルに対応したITシステムの導入、開発、運用を支援できる専門家の育成

以下のような施策が必要と思われる。

            表1 IT利活用レベルのランク付け
 レベル
 名 称         内      容
   5

動的生産管理

・受注状況に応じて、動的に生産計画が変更できる
・製品について納期、売価を営業が把握できている
・作業負荷が把握できている
   4

生産実績把握

・従業員日報や機械稼働時間などの内製作業が当日中にシステムに取り込まれる
・製品ごとに原価管理が出来ている
   3

一括生産指示

・全社的にIT導入が図られ、各システムがつながっておりデータが渡される
・生産指図など指令系がシステム化されている
・外注作業や仕入れの費用がシステムで把握できている
・受発注が電子的に行われる
   2

群島型導入

・受発注や生産指示などを業務部門ごとに導入
・相互接続がなく紙ベースのデータ受け渡し
   1

支援系主体

・経理や請求支払管理などで活用
   0

紙ベース主体

・管理は帳票、台帳ベースでITは活用されていない

6)取りまとめ者の不足

IT担当者とヒアリングしたケースについて所属をまとめると、大部分が総務部、管理部、企画部門といった部署に属しており、情報システム部といった組織に属している担当者はほとんどいなかった。
兼務者、専任担当者の主業務は、社内のPCの不具合対応などヘルプデスク的な役割に留まっているようである。

経営戦略に則ったIT戦略を企画、実行、展開するといったCIO(*2)的な立場で業務をする例は少ないようである。
従業員数が少ない企業ではCIO的な業務をする専門家の育成や雇用は困難であると思われる。
このため、業務要件がまとめられない、導入時のプロジェクトマネージャーの不在、ITベンダーへの丸投げ発注といった問題が発生しやすい。
信頼できるCIO業務を補完できる外部専門家の育成と、企業がこうした外部CIOを活用できる仕組みを作ることが必要である。
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兼務でIT担当をしている企業が多いが、ほとんどがパソコン相談といった位置付けである。IT専任者がいる企業は従業員数100名以上の企業では4割以上なのに対し、100名以下の企業では15%程度に留まり、規模の小さい企業での日常的なIT支援が必要である。 

7)経営者のIT導入に対する関わり

 経営者はIT導入、利活用の必要性を感じており、継続的なIT投資を心がけている。
経営者が直接IT導入に関わることは少ないようであるが、経営対象として意識をしている。 
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IT活用に関しては必要性を感じ継続的に導入しているという意見が多かった。
個別の意見のなかには

-製品は500種類くらいなので頭に入っている。わざわざITを導入するまでもない

-ITは否定しないが、積極的に取り込むこともしない

といった回答もあり、ITの効用は認めつつも、活用に関しては企業のおかれた環境に影響されるようである。
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直接IT導入や活用に関与している経営者は多くはないが、担当者からIT導入の提案があれば前向きに受け止めるという状況であると考えられる。
一方、こうした取組姿勢は経営戦略を立案しそれを実現するための手段としてIT導入、利活用を図るという戦略的IT導入の考え方をしておらず、課題や不具合点をIT導入で解消するというOA志向の取組がなされている。

こうした状況を打破するためには、経営戦略に基づいたIT導入手順を知らしめること、経営戦略に則った成功事例を創出して、具体例として提示することが重要である。

(*1)Request For Proposal。提案依頼書。情報システムを導入するに当たって、ユーザが納入を希望するベンダーに提供する、導入システムの概要や調達条件を記述した文書。

(*2)chief information officer、企業において自社の経営理念に合わせて情報化戦略を立案、実行する責任者のこと. 

   (NPO法人ITC横浜副理事・未来計画代表 ITコーディネータ 齋藤順一

 
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