横浜産業新聞
larger smaller reset larger
Home arrow お役立ち情報 arrow セミナー「バクテリアのタンパク質から人口網膜を創る」
セミナー「バクテリアのタンパク質から人口網膜を創る」 プリント
 ~IDEC・第123 回産学交流サロン~

創薬分野からも注目浴びる
横浜企業経営支援財団ではこのほど、第123 回産学交流サロンで「感光性タンパク質を用いる光センサー」をテーマにセミナーをおこなった。講師は桐蔭横浜大学医用工学部生命環境システム工学科学科長の小山行一教授。以下はその要旨。

■飽和食塩水中のバクテリアが光を感じる

yd-080214-1.jpg 感光性のタンパク質である「バクテリオロドプシン(BR)」を工学的に応用して、人工網膜を作りだせないか、その可能性を追求している。BRとは、バクテリアにある光を感じるタンパク質で、分子1個で機能するため、分子機械のモデル化合物としてバイオエレクトロニクスや、分子素子の分野でいま注目を浴びている物質だ。
このBRを造り出すバクテリアは、飽和食塩水中のなかで繁殖できるような特殊な性質を持っており、このバクテリアのいる溶液は紫色になっているのでよく分かる。研究ではこのバクテリアを実験室で培養し、そこからBRを単離・精製して研究に供している。
BRのサイズは直径約5nm(ナノメートル)と極めて小さいが、これが光に反応する実験ではこのBRを電気化学セルに張り付け、一方から光を当ててオシロスコープで計測してみた。すると、ある独特の光電応答がみられた。

■人の網膜と同じ光電応答をする
じつは、この光電応答は、網膜でみられる特徴的な応答と同じパターンなのだ。そこで、これを人工網膜に応用できないか研究を始めた。たとえば、このBRをガラス基盤の上でマス目状に並べて、光に対する反応を電気信号に換えるセンサーを作り、その電気信号をLEDのディスプレーに写し出せるようにしてみた。
すると、そのセンサーをT字型のものでさえぎると、ディスプレーには同じようにT字型が写しだされた。ただし、これは光を当てた瞬間にだけ起きる現象で、持続性はない。これらの実験によりBRは対象物の動きを検出したり、輪郭を強調できることが確認できた。

■視神経に問題がなければ治療できる
視力に障害が起きる眼の疾病は、その原因を大きくふたつに分けることができる。ひとつは網膜に起因するもの、もうひとつは視神経に関係するものだ。たとえば「糖尿病性網膜症」や「緑内障」は視神経にその原因がある。
一方、視野の周辺部から視力がしだいに失われてくる「網膜色素変性症」や、視野の中心部分が失われる「加齢性黄班変性症」は網膜に問題がある。人工網膜は、これらの治療に役立つと考えられる。
人工視覚をもちいた治療には、網膜移植、視神経移植、視覚領域移植の3つがある。一般的なのは網膜移植で、これはさらに移植する場所により、網膜前面、網膜後方、ハイブリッド型に分類することができる。

■視神経とのインターフェイスが実現のための課題

この人工視覚でこれまで研究されたものには、視神経にチップを埋め込み、特殊なメガネで捉えた映像をマイクロウェーブでチップに伝送する方式や、脳の視覚野に電極を埋め込み、やはり特殊なメガネで捉えた映像を電気信号を使い、脳に直接送る方式などがある。
いうまでもなく、BRを使った人口網膜なら、このような特殊なメガネは必要ない。ただ、このほかの方式も同様であるが、人工網膜と視神経をつなぐインターフェイスの部分が研究されなければならない。これが今後の大きな課題となる。

■医薬品開発のモデルタンパク質にも利用できる
ところで、このBRは1本のペプチド鎖が細胞膜を7回貫通する構造となっていることから、近年注目が集まっているGPCR(G-タンパク質共役受容体)のモデルタンパク質としても期待が集まっている。
GPCRは嗅覚や味覚など、外から与えられた刺激に反応し、体内に伝達する受容体で、人の体の中にたくさんある。たとえば、最近の遺伝子解析で人のGPCRは約5000あることがわかっている。ただ、その存在が確認されているのは約1500程度にすぎない。
ちなみに、市販されている薬剤の約50%はGPCRに作用するように作られており、現在これは巨大な創薬のターゲットになっている。今後もこのBRは医療分野での研究が進みそうである。
 
< 前へ   次へ >
ユーザ名(E-Mail)
パスワード

自動ログイン
横浜産業新聞メールニュース
購読メールアドレス:
こちらに空メールを送っても登録できます。

支援企業・団体

連載/コラム

広告主募集

Advertisement
ホーム  |  横浜産業新聞について  |  スタッフ募集  |  広告のご案内  |  サイトマップ  |  お問い合せ
Copyright 2004-2007 横浜産業新聞 - 横浜における情報産業の情報発信「ハマビズ」 - All rights reserved.
横浜産業新聞に掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は横浜産業新聞またはその情報提供者に属します。