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中小企業のIT 戦略(8)-IT 導入の進め方(その2) |
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~いい会社を作るためのIT 導入のポイント~
中小企業において、いい会社を作るためにどういう風にITを活用していくか。
何回かに分けて考えていきたい。
前回から3回にわけて、実際にIT導入を進めていく手順を紹介している。
(その1)では経営戦略の立て方を取り上げた。今回(その2)ではIT戦略の立てた方を、次回(その3)ではIT導入の進め方のポイントを取り上げる。
経営者の思いや内部環境、外部環境の制約から経営戦略が定まったとしよう。
例えば、
営業が他社との競争上、客先で提示された条件で注文を受けるかどうかを、客先で決定する必要があり、そのためには工場負荷と仕掛かり状況、個別原価が常に把握されていなくてならない。これを実現するために生産管理システムを導入し現状把握をする。
リアル店舗での販売はエリア顧客、従業員や店舗面積などで制約され上限に達しているので、新規出店の代わりに、リピーターを主顧客としてOne to Oneサービスをネットショップで展開したい。このためにWeb2.0を活用したサイトを構築する。
といったことが経営戦略である。
経営戦略といってもいろいろあって必ずしもIT戦略が必要とは限らない。
得意先への企業価値を増すために製品付加価値をあげる必要から上流工程や下流工程に進出する。このため隣接する工場を買い取る、といったITと関わりが薄い経営戦略に関してはIT戦略を考える必然性は薄い。必要なのはシステム統合と考えられるので、情報システム部門の通常の業務範囲で対応できる事案である
IT戦略を考える必要があるのは、立案した経営戦略の内容が情報流や意思決定の変革に大きく関わるような場合である。
IT戦略とは実現しようとしている経営戦略に関わる情報の流れと誰がどこで、どのような意思決定を行っているかを把握し、経営戦略を実現するためにITを使ってどのように改革していくかを考えることである。
IT戦略を立案する過程を見てみよう。検討過程は3つのステップに分かれる。
1 現状把握
IT戦略では実現しようとしている経営戦略に関わる情報の流れと誰がどこで、どのような意思決定を行っているかを把握するのがステップ1である。
情報は業務、組織、カネと共に流れていく。
1.1 業務フロー
業務フロー、特に基幹業務をどういう手順、手続きで実行するかを書き物にしてある会社は多い。また業務遂行に関して規則や規準、マニュアルなどを整備している会社もあるだろう。
業務フローが定められた時点から年月が経っていると現場サイドでの改善や得意先や協力会社との関係で、業務フローが変更されているのに反映されていないといったことも考えられるので、改めて確認をしておくべきである。
ここで定められている業務フローは上流から下流への順プロセスである場合が多い。
業務プロセスには正方向の流れとは逆の流れがある。図は協力会社から仕入れをするときの逆プロセスの例を示したものである。
逆プロセスは業務の各所で発生する。
工程途中で不良が発生した。お客さんに注文品を納めたら不良で戻ってきた。それぞれどう対処するかは会社によって異なる。対処方法が決まっている会社もあるし、現場判断に任せている会社もある。
不良の判断にしても納期を遵守するために社内の厳しい規定ではなく、注文先の規定を利用するといった運用をする会社もある。
また中小企業では例外や特急処理というのも起こりやすい。
得意先から正式な発注は後回しにして、取り敢えずモノを作ってくれと頼まれたり、通常の生産スケジュールでは間に合わないような期間での製作を依頼されたりすることがある。
また、新製品の試作や開発に付き合うことも将来のビジネス展開を考慮すると必要なこともある。
中小企業の存在価値は、ある意味ではこうした無理難題をこなす能力にあるとも言える。
こうした逆プロセスや特急、例外処理も考慮した業務フローを作成し、どこまでをITシステムで実行し、どこからは人間が処理するのかを制約条件によって決めていくのである。
ITシステムでは順方向だけしか扱わないことにすればシステム開発は容易であるが、硬直した使いにくいシステムとなったり、現実の処理と整合しなくなったりする。
一方、すべての処理をITシステムが賄うとするとシステム開発に多くの費用と期間を要することになる。
使い易くて、費用も程々という現実的な解を見つける必要がある。
1.2 組織構造
会社というのは意思決定が最も効率的に行われる組織である。
あるいは、意思決定が最も効率的に行われるような組織として会社が作られていると言い換えてもいい。
会社組織は図に示すようにいろいろな構造があるが、経営層が考えた経営方針を業務部門まで伝達し、業務部門で実施したことや起こったことを経営層に報告するという情報の流れがどのように構築されているかを把握する必要がある。
組織の意思決定でも逆プロセスは存在する。
上長に決裁を求めたが修正を求められたり、認可されずに差し戻されたりした。
こうした情報のキャッチボールをITシステムで対応させるのは意外に難しい。
どの時点で人間系に処理を委ねるのか判断が必要である。
また、情報が伝達される過程で集約や遅延、蓄積が発生するし、ボトルネックとなる箇所も存在するはずなので、そうしたことも含めて情報の流れをつかむ必要がある。
その上で、どの部分をITに置き換えられるかを検討する。
1.3 意思決定
情報は最終的に意思決定権者に伝えられなければならない。
意思決定を下すのは経営者とは限らない。
効率的な意思決定のために、意思決定の権限は分散され、分担されている。
たとえば、製造工程において製品が出荷可能あるは次工程に回せる良品かどうかを判断するのは工程の製造担当者や検査担当者である。
仕入先から材料を購入するとき価格を決定するのは仕入れ担当である。一方、仕様を決定するのは設計責任者、納期を決定するのは工務責任者である。
こうした責任者に必要にして十分な情報が伝わらなければ正しい意思決定は行えない。
どのような情報をどの意思決定権者に伝達するかを明確にする必要がある。
2 経営戦略遂行のための変革
ス テップ2として、経営戦略を実現するために業務の流れや組織構造、意思決定の方法や意思決定権者をどのように変えるかを検討する。
3 人間系とIT系の分業
ステップ3として、こうした変わった情報の流れの部分のうち、どこをITが担当し、どこを人間や組織が担当するのかを検討する。
この仕分けは綱引きのようなものである。
ITがカバーする部分が少なければ投資は少なくて済むがIT導入効果は限定的にとどまる
一方、ITが関わる部分を増やせば高い効果が期待できるが、投資は多くなり、システムは複雑化し、ITに不慣れな従業員が多いと消化不良に陥る可能性もある。
I T戦略を決めていくための派生的な作業として、事象を計測する仕組みや情報が正しく、適切に流れているかを管理する仕組み、意思決定の結果を説明する仕組み(アカウンタビリティ)の検討、ITシステムへの組み込みも必要である。
次回は出来上がったIT戦略からIT導入へ展開していく方法を解説する。
NPO法人ITC横浜副理事・未来計画代表 ITコーディネータ 齋藤順一
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