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AEC(ASEAN経済共同体)への戦略的アプローチ!(その3) プリント
2015/11/11 水曜日 15:48:43 JST

本特集12号においては、ASEAN及び加盟10ケ国の経済規模なり、経済格差を概観したが、本号では神奈川県から見たASEANの位置づけを、貿易取引、特にここではASEANを潜在的な大消費市場と捉えているので、輸出取引の観点から見てみたい。

県内には横浜・川崎・横須賀の3港があるが、特にその旨明記しない限り全体の80%前後を占める横浜港からの輸出額(円貨ベース)の統計データを使用し、また対象輸出品目については、横浜港からの輸出ではあるが必ずしも神奈川県産品に限定したものではなく、横浜港を輸出港とする隣接各県産品を含むことを、予めお断りしておきたい。

 

1.横浜港からの主要輸出先別の輸出額の推移は表-1の通りである。

  横浜港からの2014年の輸出総額は約7.1兆円で全国約73兆円の9.7%を占め、トヨタ自動車を擁する名古屋港に次いで全国第2位である。

  輸出品目は多岐に亘るが、自動車の輸出が約1.6兆円で単一商品としては全体の21.8%と突出している。

  2013年からのアベノミクスの本格始動により、2014年までに約32%の円安という追い風を受けた自動車輸出金額は2年間で約27%の増額を記録し、自動車だけで全輸出総額を5%押し上げたことになる。

  ただ、本特集の趣旨が中小・ベンチャー企業視点でAECをどう捉えるか、であることからすれば、明らかに大企業である自動車メーカーの巨大さゆえに、その他の輸出品目や輸出企業が実態以上に過小評価されかねないとすると、これは本特集の趣旨に合致しない。このような考え方から、表-1は全ての項目において自動車の輸出金額を除いたうえで、各国・地域向けの輸出金額の推移を示したものである。

 

     横浜港からの各国・地域別輸出金額の推移(単位:億円)【表-1】 

 

輸出総

ASEAN

ASIA

NIES

中 国

米 国

E U

2012

55,516

10,454

10,457

12,874

7,831

4,453

地域別%

100%

18.8%

18.8%

23.2%

14.1%

8.0%

2013

54,356

10,223

10,849

11,713

8,127

4,382

地域別%

100%

18.8%

20.0%

21.5%

15.0%

8.1%

2014

55,644

10,119

10,823

12,251

8,427

4,668

地域別%

100%

19.4%

19.5%

22.0%

15.1%

8.4%

  表-1から見て取れることとして、上記5地域との地域別シェアーを見る限り特定地域に過度に依存していることもなく、比較的均衡のとれた輸出市場を確保していることが窺われる。

横浜港からの輸出先としては、このほかに中南米、オセアニア、中東、アフリカ等があるが、上記5地域で全体の80%強を占めていることでもあり、オーストラリアを別とすれば、その他地域以上にASEANを重点志向していくべきと思う。

 

2.円安効果は?  

  ただ、直近2年間で約32%の円安により輸出競争力が高まり輸出数量の伸びとともに円貨ベースの輸出金額が増えるはずとの円安効果の観点から見ると、輸出総額においては3年間で僅かながらも減少している。

理由として考えられることは、いわゆる通貨安のJカーブ効果による輸出金額増額までのタイムラグが考えられ、この点は2015年以降の推移を見る必要がある。

-2は、横浜港からの輸出の主力製品(自動車を除く)の輸出金額の推移を示すものだが、ここでは誌面の関係から年間輸出額100億円以上の品目に絞って、20122014年の3年間の推移を辿ってみたい。

 

横浜港からASEAN向け主要品目別輸出金額の推移(単位:億円【表-2

 

品  

2012

2013

前年比

2014

前年比

輸出総

(自動車を除く)

10,454

10,223

  

10,119

 

一般機

原動機

738

 742

 △

763

 

金属加工機

674

 536

 

541

 △

ポンプ・遠心分離

435

419

 

408

 

建設・鉱山用機

391

362

 

349

 

荷役機

395

 362

 

368

 

事務用機

107

102

 

134

 

輸送用機

自動車部品

911 

 852

 

820

 

電気機

電気回路等の機器

347  

 365

 

386

 

電気計測機

248

 266

 △

200

 

重電機

146

 108

 

222

 △

半導体等電子部

103

  96

 

92

 

原料別製

非鉄金属

649

 663

 

604

 

金属製品

364

 358

 ▼

294

 

鉄鋼

270

 268

 ▼

280

 

ゴム製品

153

 146

 ▼

166

 

化学製品

プラスチック

405

 432

 △

432

 

染料・着色剤

168

 170

 △

179

 

鉱物性燃料

石油製品

142

 303

 △

110

 

その他

科学光学機器

186

 175

 ▼

 155

 

※横浜税関発表の年間平均為替相場:

2012年:79.55/ドル、2013年:96.91/ドル、2014年:105.30/ドル

   

円安効果により輸出金額の増額を遅くとも2014年までに確保した製品群も当然のことながら多いが、自動車部品、一部の一般機械、非鉄金属や金属製品といった大型製品のように逆の動きを示しているものも少なくない。

前述のJカーブ効果のほか、円相場はアップダウンを繰り返しながら年単位で見れば大幅円安との結果になったが、この過程では輸出企業は常に相場の反転にも備え乍ら慎重にドル建て輸出価格を決めていたと考えられる。つまり単純に円安イコールドル建て単価の引下げということにはならず、中には数量が予め固定されているような契約によりドル建て単価の引下げにも拘わらず輸出数量が増えないとか、或は資源価格の下落など、更には競合する他国メーカーとの価格競争といった交易条件の悪化など様々な要素が絡んでくるはずで、短期的には一概に円安イコール輸出金額増とはならないことも理解しておくべきと思う。

 

ただ、少なくとも自動車産業の国際競争力の高さと、自動車関連の巨大な裾野産業に関わる中小メーカー群が間接的にせよ、円安効果を享受できていることは言えると思う。

 

3.横浜港からASEAN各国向けの輸出の動向

次に、この円安局面においてASEAN10ケ国夫々への輸出の動向はどうなっているだろうか?

2014年の横浜港からのASEAN各国向け輸出総額(自動車以外の全品目)及び円高時代の2012年の輸出総額との増減は表-3に示す通りである。

 

横浜港からの各国・地域別輸出総額(単位:億円)  【表-3

国 

2014

輸出総額

2012年比較

増減

増減の主な製品群

タイ

3,549

▲640

金属加工機械、自動車部品、銅・同合金

インドネシ

1,639

▲88

原動機、自動車部品、プラスチック

マレーシ

1,350

▲90

建設・鉱山用機械、非鉄金属、アルミニウム

ベトナ

1,341

 396

原動機、電気回路等の機器、プラスチック

シンガポー

1,267

22

船舶類、プラスチック

フィリピ

777

▲21

ポンプ・遠心分離機、自動車部品

ミヤン

  105

68

建設・鉱山用機械、重電機、鉄鋼

カンボジ

   68

24

建設・鉱山用機械、二輪自動車類

ラオ

12

▲6

重電機器、船舶類、自動車部品

ブルネ

6 

増:電気回路等の機器、減:荷役機械

 

前項の品目ごとの増減のバラつきを縦軸とすれば、輸出先各国ごとの増減が横軸といったイメージだが、日本から見た円安による輸出競争力もさることながら、相手国の経済の好不調・景気の良しあしが輸出の増減に大きく関わっていると考えられる。

例えば、2014年のタイのGDPは前年比96.5%、インドネシアは97.4%と成長率が前年割れしており、日本からの輸出にブレーキが掛かった。一方では、CLMV4ケ国の先頭を走るベトナムは10%前後の成長率で活況を呈しており、従って横浜からの輸出も好調を持続しているといったように、相手国の不況、金融政策における金利の下げが自国通貨安に繋がり、円安が相殺されるといったことも価格競争力の面では大きな要素と考えられる。

  ※出典 横浜税関                       (以下次号)

                    (文責 今井周一 平成271031

 

 
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