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中小企業のIT戦略(8)-IT導入の進め方(その1) プリント
   ~いい会社を作るためのIT導入のポイント~

中小企業において、いい会社を作るためにどういう風にITを活用していくか。
何回かに分けて考えていきたい。
 今回から3回にわけて、実際にIT導入を進めていく手順を紹介していく。
(その1)では経営戦略の立て方を、(その2)ではIT戦略の立てた方を、(その3)ではIT導入の進め方のポイントを取り上げる。

 経営戦略を立てる理由はIT導入の目的の明確化である。ITは手段であるので、何のためにIT導入をするのかという理由付けが必要になる。これを怠るとIT導入をすれば会社が良くなるとか、ITを導入すれば何もしなくても問題が解決するといった目的と手段の取り違えが起こってしまい、効果的なIT導入が出来なくなる。
 経営戦略は古くから多くの経済学者のテーマである。
 経営戦略とは何かという定義は多くの専門家が示してきた。
 いくつかを紹介したい。
 「企業の基本的な長期目標や目的を決定し、目標を達成するために行動方式を採択し、諸資源を割り当てること」(経営戦略と組織:チャンドラー、1962)
 「市場のなかの組織としての活動の長期的な基本設計図」(経営戦略の論理:伊丹敬之,1980)
 「持続的競争優位を達成するためのポジショニングを構築すること」(戦略とは何か :クルイヴァー&ピアーズ 、2002)
 ここでは経営戦略を現在の状態から目標とするより良い状態へ進むための目標設定と方法と考えておく。現状とあるべき姿を結ぶベクトル(矢印)と思って頂いてもいい。
 経営戦略に関しては多くの研究がなされ、その中で経営戦略の立て方の雛形とも言うべきフレームワークが提案されてきた。
 ここではそうしたフレームワークを紹介しながら、自社の進むべき方向をどのような決定していけばいいかを解説したい。
 このとき、経営者が改革をしたいと考えていることが前提になる。
 昨日のままの状態で今日も仕事をし、明日も同じように仕事をするという事であれば新たな戦略も投資も不要であり、IT導入も要らないことになる。何か現状を変えてより良くしていきたいという変革への想いが源泉である。
 改革を実現するには現状からよりよい状態へ進めるためのベクトルを明確に形作ることが重要である。
 ベクトルの始点が現状、終点が目標地点、X軸が時間、Y軸が投資効果であり、方向は種々の制約で決まる。

1 改革の動機
 自社の状況を把握することが戦略を立てる第一歩である。
 これは言わばベクトルの始点に相当する。
 孫子の兵法の一節に「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」と言う言葉がある。
 ビジネスで敵といえば顧客や仕入先、競合他社などであり、これらに株主や従業員を加えたステイクホルダー(利害関係者)と考えてもいい。

             it-8-1.jpg
 あるいは会社を取り巻く環境を外部環境、会社内の状況を内部環境として考える方法もある。
 つまり経営戦略を立案する動機は経営者の想いと内外環境の変化となる。
 マイケル・ポーターは「5つの力」で、考慮すべき外部環境要因として、「業界内の競争の激しさ」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「新規参入の脅威」「代替品・サービスの脅威」を挙げて、これらについて環境分析を通じて代替策をとる方法を提案している。
 漠然と外部環境を考えるのではなくこのように場合分けして考えていくと漏れがなくなる。

 己とは経営者や会社のことである。
 経営者が自分の会社をどう思っているのか、どこが不満なのか、どうしたいと思っているのか。経営者の想いを整理する。
 そのためには自社の経営リソース、一般には人、モノ、金と言われるが、これが十分に使いこなせているのか、100%力を発揮しているのかを考えてみるものいいだろう。
          it-8-2.jpg
 もし、会社の現状が取り立てて不満がなく、将来に亘っても不安な要素がなければ戦略は不要であり新たな投資もいらないことになる。

2 現状分析
 現状分析をするツールはSWOT分析、バランスト・スコアカードなど種々のものが提案されている。
 SWOT分析は会社の社内(内部環境)の強み、弱み、社外(外部環境)の機会と脅威を抽出し、それぞれ機会を利用して強みを活かす方法や、脅威に対して自社の弱みを克服する方法などを考えていくものである。比較的簡単に現状分析と戦略立案が検討できるので利用されることが多い。
 関係者が集まりKJ法などによるブレインストーミング的な手法で、要件を抽出しこれを分類、グルーピングしてSWOTの項目にする。      it-8-3.jpg
 バランスト・スコアカードはノートンとキャプラーによって提唱されたもので財務、社内プロセス、顧客との関係、人材育成などの観点から評価し、非財務的業績評価指標も重視し、依存関係を考えながら戦略を検討していくものである。時間ファクターを考慮できるのが特徴と言える。
 どの方法にも一長一短があり企業との適合性もあるので、専門家などと相談しながら適用するのがよい。
 経営戦略は投資であるので、財務分析や税理士、メインバンクなどとの相談で投資のための原資がどの程度あるのかを把握しておく必要もある。

3 あるべき姿
 現状が明らかになったところで、経営者の想いやステイクホルダーの希望、自社の事業価値などから到達すべきゴールを決める。
 自社を継続安定的に持続するように経営するというのが経営者の共通の目標となるだろう。
 そのほかに、企業理念とかビジョン、ミッション、社訓などで会社が向かうべき方向やあるべき姿を提示している会社もあるだろう。そうした目標を達成すべく投資を行い、組織を育て、事業価値を高めてきたはずであるから、ゴールを決める上ではこうした会社の方向性を示すものも重視したい。
 また、業界や同業他社、競合相手を調査し、優れた仕組み、業務手順、ITの活用状況などを参考にするのもよい。
 最終的な着地点は、期待効果とリスク、投資原資、組織の成熟度、達成時期など種々の制約を勘案して理想の目標から一段下がった現実的に達成可能な目標を決定する。
 現状分析によって改善点が明らかになるが、これを修正するだけでは弱いところを補強するだけの改良的なアプローチになってしまい、組織強化にはつながらない。
 業務効率化のため電子機器を導入するOA的な改善に留まってしまう。

4 経営戦略
 現状とゴールを結んだものが進むべき方向、ベクトルであり、いかにリスクを減じて速く安く目標に到達するかが戦略である。-
 経営分析や経営戦略については多くの研究があり、フレームワークが提案されている。新事業や新製品、新サービスの検討にあたってはマーケティングの手法が使われる。
 マーケティングに関しても多数の研究があり、さまざまなアプローチが提案されている。
 これらはその時代の実際の成功企業を多数研究し、その中から共通因子を取り出してフレームワークにするという手法が取られる。当時の成功企業が現在では失敗企業になっている例もあり、時代と共にフレームワークも変遷してきているので、採用するときは専門家などに相談しながら自社にあったものを選択することを薦めたい。
 経営戦略は不確定な未来における投資活動であり、リスクを完全に取り除くことは出来ない。リスクとリターンを秤にかけて落としどころを決めると共に、リスク発生に備えて常に代替案を用意しておくことが大切である。
 ただしリスクを恐れていては投資価値のあるリターンは期待できない。
 経営戦略をどの程度、詳細化するかはケースごとに異なるが、次の作業での展開を容易にするため、目的、期待効果、リスク、期間、投資費用などプロジェクトの概略を定め、担当組織を決めて具体化していくのが望ましいだろう。

 次回は経営戦略をIT戦略の展開していく方法を解説する。

  NPO法人ITC横浜副理事・未来計画代表 ITコーディネータ 齋藤順一


 
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