~IDEC・第121回産学交流サロン~
地球温暖化を防ぐ一石二鳥のリサイクル
横浜企業経営支援財団ではこのほど、第121回産学交流サロンで「CO2、一体どうしたらいいのでしょう!?くず鉄で水素を発生!!」をテーマにセミナーをおこなった。講師は武蔵工業大学工学部の江場宏美准教授。以下はその要旨。
■CO2の吸収処理はコストがかかる
地球温暖化にともない、世界的にCO2の発生量削減と、石油に代わるエネルギーとして水素の普及に注目が集まっている。このうちCO2の削減については大気中への放出を防ぐため、人工的に分離回収、固定する方法が試行されている。
この分離回収には高分子膜、ゼオライト膜などを利用した膜分離法や、活性炭、ゼオライトを使った吸着法、それにアルミナ吸収液、金属炭酸塩の化学吸収法がある。
化学吸収法では、最近では東芝がリチウム複酸化物を開発している。また、分離回収したCO2は地中や海中、鉱物などへの隔離する方法などが考えられているが、一長一短がある。
たとえば地中や海洋に隔離すると、大量にCO2を処理できるが、ただ運用も大規模でコストもかかる。それに環境への影響も考えられる。
■石油に代わる燃料に水素が注目されている
ところで、CO2を発生させないため石油に代わるクリーンエネルギーとして利用が進みつつあるのが水素である。これは、家庭用燃料電池や自動車用、業務用のエネルギーとして期待され、省エネ効果にも優れている。
水素はエネルギーとして理想的なのだが、水素分子(H2)は地球上にほとんど存在しない。このため、大量に使うには人工的に作りだす必要がある。
これには、化石資源を利用する方法としない方法とがある。化石資源の利用では、水蒸気改質法として天然ガス(メタン)、ナフサなどを使う方法、それに部分酸化法、自己熱改質法などがある。
ただし、いずれの方法でもクリーンエネルギーをつくる際にCO2も発生させてしまう。これに対して、化石資源を用いない方法では、水の電気分解、バイオマスが一部ではあるが利用されており、また今後実用化に向けて期待されているものに水の光分解もある。
一方、作り出した水素をどのように貯蔵しているのかというと、現在は圧縮ガス方式や液体方式、水素吸収合金などの手段がある。このうち、圧縮ガス方式は軽量水素燃料タンクに貯蔵するものだが、かさばりやすくまた容量も限られることから自動車のエネルギーとして利用すると走行距離が短くなる。液体水素だと冷却・液体化するのに大量のエネルギーが必要だ。水素吸収合金はコンパクトだが重いのが難点だ。
■鉄を利用すればCO2を削減し水素が作れる
そこで、提案したいのがCO2の酸としての働きだ。これを応用し、鉄などの金属と反応させて水素を生成するのである。CO2は金属の炭酸塩として取り込まれるので、これなら邪魔者のCO2を削減できるばかりでなく、クリーンエネルギーの水素も手に入れることができ一石二鳥である。なぜ鉄なのかというと、それは資源が豊富で各方面で大量に活用されており、またコストも安価に抑えることができるからだ。
では、鉄によるCO2の吸収と、水素の生成能力についてみてみよう。まず、この方法なら自発的な化学反応に基づくので、他の反応エネルギーを投入しないで済む。しかも、水素の発生は単純なプロセスで行われ、加熱することなく室温でできる。つまり、いつでもどこでも実施しやすいことになる。
さらに、使用するのは金属廃棄物となった鉄でいい。データによれば近い将来、日本では鉄鋼需要の伸びよりもスクラップの発生量のほうが多くなる。これを原料にすれば廃棄物の有効利用につなげることができるだろう。
■1辺が10mのリアクターで年1万トン処理できる
たとえば、こんなシナリオが考えられる。化石燃料を使った発電所(100万kW級)が排出するCO2は炭素換算で年間100万トン。また、鉄鋼、化学、製紙などを製造する工場は企業グループ全体で年間10万トンを排出している。
この排出量を10%削減するには年間1~10万トンのCO2処理設備があればいい。年1万トンなら1時間あたり1・1t(CO2体積で2×106NL)を処理すれば間に合う。ボールミルで鉄を粉砕して反応させた実験では容器内のCO2が15分で半減することが確かめられ、同じ条件でスケールアップすると仮定すれば、一辺が10mの立方体(1×106L)のリアクターで実現できることになる。そして、CO2が処理されれば、それと同じ体積の水素が発生する。これを回収すればエネルギーとしての利用ができる。
■鉄価格の高騰が新たな障害に
ただ、問題となるのは、中国での鉄の需要が増え今はスクラップの価格が急騰していることだ。平成13年の段階で1トンあたり7800円だったスクラップが、現在では37000円にまで値上がりしている。これでは、大量に水素を生産しようと思っても採算ベースには乗りにくい。このため、その用途をモバイル用の燃料電池向けにするなど、分野を絞って応用すればいいかもしれない。
今後の検討課題をあげるとすれば、塊状スクラップの低コストかつ低消費エネルギーによる粉砕方法、切削粉などスクラップの利用、それに最適反応条件の決定などだろう。また、くず鉄中や排ガスの中に共存する不純物の影響や、炭酸鉄の有効利用法なども考える必要がある。
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