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横浜リエゾンポート2010(第4回)-神奈川大学 プリント
2010/11/11 木曜日 07:21:29 JST

バイオ燃料を低コストで製造
ナノ粒子で水と油を混ぜる
             神奈川大学研究支援部三相乳化プロジェクト特別招聘教授 田嶋和夫氏

■バイオ燃料で抑制できるのはCO2だけ
石油の代替燃料として注目を浴びているのが、BDF(バイオディーゼル燃料)だ。おもに植物を原料とする燃料で、カーボンニュートラル(CO2の増減に寄与しない)の観点から、その利用を国も積極的にすすめている。
ただ、このBDFはCO2の増加を抑制できるものの、石油と同じように燃えると地球温暖化物質で、大気汚染の元凶となるNOx(窒素酸化物)や、PM(粒子状物質)を発生させる。さらに、精製過程で環境汚染につながりかねない廃グリセリンや、汚水も大量に排出する。このため必ずしもクリーンエネルギーとはならず、また廃棄物処理にコストがかかるため割高な代替燃料となっている。

■三相乳化で油に水が混ざる
神奈川大学は、このBDFの問題点を極めて低コストで、しかも有害廃棄物をほとんど出さずに解決する世界初の技術を確立した。同大学研究支援部三相乳化プロジェクト、田嶋和夫特別招聘教授のグループによるもので、横浜リエゾンポート2010で「バイオエマルション燃料」として公表する。 
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エマルション(乳化)とは油に水が混ざっている状態のことで、一方が小さい粒になって他方の中に分散している状態をさす。田嶋氏はこの水と油の関係を「三相乳化」という手法で実現させた。三相の相とは、水と油とナノ粒子の3つである。

■コストが4分の1に
もともと、植物油の粘度は大きく、そのままでは燃料として使用できない。そこでBDFは植物油にメタノールを加え、アルカリ触媒を通して粘度を小さくし、同時に燃えやすくするために油以外の成分を取り除いている。
これに対し、三相乳化は植物油に特殊な液体を入れ、油をナノ粒子で覆われた粒状にすることで水に混ざりやすくし、水と混合させて粘度を小さくし燃えやすくしている。このナノ粒子で覆われた油の粒は、じつに3ミクロン程度の大きさだ。
同氏は「BDFが化学的な処理で燃料化しているのに対し、三相乳化はナノ粒子と油を引力(ファンデルワース力)で結びつける物理的な処理。だから大量の廃グリセリンも汚水も発生しない」と説明する。
さらに画期的なのは、このナノ粒子をつくる特殊な液体が、市販のひまし油を加工した「ひまし油誘導体」を材料としていること。大量に入手できるだけでなく、化学的な処理とくらべてコストが4分の1と大幅に抑えられる。

■使用済みの廃油も再生可能
三相乳化の特徴はそれだけにとどまらない。この技術を使うと植物油以外の油も乳化できる。たとえば軽油にも水を混ぜられる。これを燃料に利用すれば、大幅に燃焼時のNOxとPMの排出量を削減できる。
実際に軽油と水を65対35で混ぜ、これを30tのディーゼルトラックの燃料に利用しておこなった実験では、NOxが8割減、PMは20分の1となった。
バイオエマルション燃料を利用すると、カーボンニュートラルでCO2の排出量はゼロ。製造コストを抑えられ、NOxやPMなどの地球温暖化物質の排出量も抑制される。
この技術の応用により、さまざまな工場で廃棄されている使用済みの油も再利用が可能となり、コストのみならず資源の有効利用にもなる。
現在、神奈川大学は実用化するためのパートナー企業を求めており、横浜リエゾンポート2010で企業との出会に期待を寄せている。

横浜リエゾンポート2010
技術説明会:11月18日15時5分~15時30分
会   場:慶應義塾大学(日吉キャンパス協生館)多目教室1 
http://www.hamabiz.jp/images/stories/tokushuu/yrr/yrr-2-2.pdf

未来環境テクノロジー:http://www.ku-mkt.co.jp/

 
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