~いい会社を作るためのIT導入のポイント~
中小企業において、いい会社を作るためにどういう風にITを活用していくか。何回かに分けて考えていきたい。
第6回は製造業のIT導入事例の第3回として、川崎市にある自動車部品製造業の株式会社光輝社を紹介する。
1.会社概要
光輝社は創業者が大手メーカーで技術を習得後、レンズコーティングを主業務として昭和26年に設立した会社である。川崎と焼津に工場を有しており、従業員は両工場あわせて約100名である。
現社長の芹田正義氏は2代目の社長である。
初期は真空蒸着技術を活かして蛍光灯のソケットやプラモデルなどへの蒸着をしていたが、現在では自動車用リフレクターの真空蒸着に特化し業務展開している。
リフレクターとは自動車のヘッドライトやテールランプに付ついている、おわん形をした銀色の反射器のことである。
リフレクターは自動車生産に連動した量産型の製品であるが、中小企業の足回りのよさを活かして、試作品や修理・保守部品としての保用品の生産も行っている。

リフレクターは部品メーカーによってバルブ(光源)やレンズと組み合わせてヘッドランプやテールランプとして組み立てられた後、自動車の部品として供給される。
リフレクターは鋳物やプラスチックの生地に下塗り塗装を施した上に、アルミを真空蒸着して製造する。わずかな傷や汚れ、塗りムラも認められない厳しい要求品質に応える必要がある。
自動車業界では自動車メーカーが下請け会社と共同で試作開発を進めるが、光輝社も同様で、量産までに4段階の試作を経て量産技術を確立し製品化する。社長の仕事の重要部分は試作開発対応である。
2.システム導入まで
芹田社長は業容の拡大に伴いITシステム導入による生産情報の統合管理の必要性を強く感じていた。光輝社で作るリフレクターは自動車の製造ラインに直結しておりJIT(Just In Time)が求められる。カンバン方式も導入されている。製品製造数は週20万個にのぼり、綿密な在庫管理や生産管理、迅速な不良発見・管理などが必要であった。
しかし、中小企業の多くがそうであるように自社内に情報企画を担当する人材がいないため、導入に踏み切れないでいた。
そんな状況が続いていたときに、得意先からITコーディネータ(筆者)を紹介されたこと引き金になり、IT導入を決断した。
約半年をかけて、経営者の考え、会社のあるべき姿、経営戦略、IT導入の方向性、従業員の考え方や希望、現状業務分析、IT活用状況や会社のIT力の調査などを経て、IT導入のベースラインを確定した。

その後、RFP(提案依頼書)による提案方式に応募したベンダー3社の中から中堅の独立系ITベンダーを開発ベンダーとして選定した。ITベンダーと協業でデータベースのパッケージをベースにして生産管理システムを構築した。
バーコードを導入し工場内の各ライン主要工程で工程出入りをチェックすることで、ロットの仕掛進捗状況が工場内のすべてのPCで確認できるようにした。
生産途中で不良品のチェックとシステムへの記録をすることで、ほぼリアルタイムで不良状況を把握できるようにした。
光輝社の従業員がITシステムに習熟していないことも考慮して、生産管理ステムは管理に重点を置き、生産計画は人間系で処理するようにしている。開発した生産管理システムの構成は図3に示すようなものである。
川崎と焼津の工場は製品種類・系統が違うため両工場にサーバーを設置し、工場間をVPN光回線で接続し、必要な項目の同期を取るようにしている。
4.IT導入の効果
実績のある生産管理システムを導入したため開発上の問題発生は少なかったが、業務多忙や初めてのITシステム導入のためシステムの習熟や負荷が増加する上流工程の人的リソースの補充に手間取った。
IT導入によって以下のような効果があがった。
・即日製造完了品種の割合増
・注残管理の把握
・情報の共有化による業務の効率化
・意思決定支援と部門間情報伝達の向上
(注:実際には数値評価しているが、ここでは定性的表現にとどめてある)
5.IT導入成功のポイント
IT導入を成功させるためのポイントはいくつかあるが、光輝社の例では以下のような点が重要であった。
(1)専門家の支援
従業員は日常の業務に忙殺され、IT導入を企画する余裕がない。
光輝社でも状況は以下のようであった。
焼津工場入社した女子社員が、あまりのITインフラの未整備に驚いて、一念発起し自主的にパソコン教室に通ってPCの勉強をした。その後、パソコン教室の先生と共にネットワークを敷設し、ファイル共有を実現することで生産管理情報を共有するシステムを完成させた。
こうした環境では本格的なIT導入のための情報企画やIT導入プロジェクト管理、ITベンダーとのコミュニケーション、立ち上げ、運用管理を社内の人材だけで対応するのは困難である。
情報管理部門やPCヘルプデスクのような役割を持つ部署を有する中小企業もあるが、これらはライン業務の一環であり、情報戦略や情報企画のようなスタッフ業務ではないことに留意する必要がある。中小企業ではIT導入を定常的に実施することはあまりないので、情報企画のスタッフ部門を抱えることは現実的でない。
自社の足りない分を外部人材で賄って対応するのがよい戦略である。
(2)経営者と従業員のやる気
光輝社の芹田社長は自身がITに詳しくないことを自覚されていたためか、カネは出すが口は一切出さないというスタンスを最後まで貫かれた。
経営者として専門でないことは専門家に任せる。そのために任せるに足る専門家を探す、という姿勢は中小企業のように人的リソースが十分でない環境での賢明な選択といえる。
従業員も自社においてIT活用が十分でないことを認識していたためIT導入を強く希望し、プロジェクト全般に亘って積極的に参画した。
全社一丸となってIT導入に取り組む姿勢は成功の大きな要因となる。
NPO法人ITC横浜副理事・未来計画代表 ITコーディネータ 齋藤順一
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