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セミナーレポート:「100年に1度の経済危機に地域経済はどのように立ち向かうのか」 プリント
2009/03/05 木曜日 11:29:04 JST
      講師:(財)横浜企業経営支援財団 常務理事 吉田正博氏

100年に一度の危機は、また起きる!
地域循環型の経済を導入し市民の雇用を守れ


NPO法人ヴイエムシイ(横浜市中区)はこのほど、第68回ハーバークラブ講演会を開催し「100年に1度の経済危機に地域経済はどのように立ち向かうのか」をテーマに講演会を行った。講師は横浜企業経営支援財団の吉田正博常務理事で、地域経済の進むべき方向をグローバルとローカル、両方の視点から語った。講演の要旨を掲載する。
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■横浜の経済力はチェコ並み
ts-090305-2.jpg100年に一度といわれる世界的な経済危機と、混迷を深める日本の政治の現状、また疲弊する地方経済は「国に頼らずに自立できる地域社会」の確立を強く求めていると思う。では翻ってみて、私たちの横浜市はどうなのだろうか。
横浜市の人口は現在365万人。これは世界の240カ国(地域)のちょうど真ん中あたりに位置する。経済力でみるとGDP換算で13兆円、じつにOECD先進30カ国中25位となりチェコ並みの経済力がある。いわば横浜市は堂々たる“都市国家”と言ってもいいのである。
地域社会を県という単位でもみれば、市はその一部に過ぎないのかもしれないが、しかし神奈川県と横浜市とはまったく違う。私たちには“ヨコハマ”という共通のブランドがあり、市民にも統一感がある。これはとても大切なことだ。

さて、地域社会が自立するために必要なのは、なにより経済政策である。それも市民の幸せが基本になったものでなければならないと思う。そのために一番必要なのが雇用を生むことだ。日本経済が右肩上がりのときは企業誘致にそれを求めたこともあった。しかし、その結果がどうだったのか、現在の企業城下町と呼ばれている都市の疲弊ぶりをみれば、おのずとその答えがわかるだろう。

■地元に魅力がないと企業誘致は失敗する
いうまでもなく、誘致した企業は地域住民を雇用するために存在するわけではない。利潤がともなわなければ、有無を言わずに人件費の安いアジアに拠点を移す。経済がグローバル化すればするほど、その傾向は強まっている。

もし地域経済の牽引力となる企業を誘致したいのなら、地元企業が持つノウハウや技術をネットワーク化するなど、知財に魅力もたせ、その企業の存続に必要不可欠な資産を提供できる態勢を整える必要がある。
IDECでは現在、市内を含め地方の国立大学など16校と産学連携のネットワークを構築しつつある。地方の国立大学には現場に精通した非常に優れた研究があり、これを市内企業と結びつけることで新しい知財やビジネスを創出したいと思っている。大学側も横浜の企業が持つモノづくりや、優れたサービスに強い関心を持っている。近い将来、産学連携で市内から独創的な製品やサービスを生み出す企業が誕生し、より多くの雇用が生まれることを期待している。

またIDECの提携先には、三井住友銀行などのメガバンクのグループなども入っているが、これは産学連携の輪に最初から入ってもらうことで、金融だけでなくマーケット情報の提供や取引先の紹介、起業へのアドバイスなどで支援してもらうためだ。

■経済の3分の1は地域内循環させよ
これは私の持論だが、経済の3分の1は地域内で循環させるべきだと思う。つまり、ヒト・モノ・カネの経済資本を地域内で調達・供給するという循環を生み出し、それを地域経済全体の3分の1まで押し広げるということだ。
こうしておけば、現在のような経済危機が襲ってきて大きなダメージを受けたとしても、再建の可能性が出てくる。第二次大戦後の日本の経済規模や、関ヶ原の戦い後の毛利氏の石高をご存知だろうか。いずれもそれまでの3分の1だった。戦後日本の復活劇や、幕末の長州藩の活躍も、経済の3分の1を守ることができたがゆえである。

いうまでもないことだが、経済のグローバル化が進めば世界は運命共同体となり、現在のような100年に一度の危機が再び起きてもおかしくはない。このように経済環境が大きく変わっていることをもっと私たちは認識すべきだろう。

■地域内資金循環こそが地元を救う
地域循環型経済を構築する一環として、私は「横浜型債券市場」を提案し、横浜市で事業化している。近い将来これを発展させたいと思っている。それは市民バンクの一種で、市内企業に市民が直接投資することで雇用を生み出し、雇用者は賃金を得て市内で消費するという仕組みだ。たとえば、高齢者の施設が1億円でつくれるのであれば、開業資金を銀行に頼らず市民から集めて事業化するのである。これなら貸し渋りで事業が立ち往生することもない。このような経済の仕組みがあると、たとえ経済危機が訪れても十分市民の雇用を守ることができる。

ちなみに横浜市の金融機関の預貸率は62・5%。市民は銀行などに15兆円を預けているが、このうち市内企業の融資に回されるのは10兆円弱しかないのである。残りの5兆円は銀行が資産運用のために使っている。これはかなりの額である。

これからは積極的に地域循環型の経済政策を実施しないと市民の雇用は守れない。地産地消の考えとともに、いまこそ本当の経済政策をとるべきだ。経済は企業だけよくてもだめだ。そこに市民がいて互いにWIN・WINの関係があって初めて成立すると思っている。

横浜企業経営支援財団:http://www.idec.or.jp/
NPO法人ヴイエムシイ:http://www.vmcy.com
 
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